ディナイ不要論⑤~ゾーン禁止とバックドアカットの価値~

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前回の記事:ディナイ不要論④~ディフェンスをしながらオフェンスをする~

画像は、今回の記事と繋がる「灯台下暗し」のイメージです。

ここまで、ディナイ不要論という立場で記事を書いてきましたが、最初から読まないと伝わらないこともあるので、是非最初から読み進めてみてください。長いですが、その分、今までない発想を学べるはずです。もともと、このシリーズを始めようと思ったのは最初にも話している通り、ディナイを深めるためであり、オフェンスの楽しさを広げるためです。不要という言葉を使っていますが、実際に不要かどうかを決めるのは僕ではなく、それぞれのチームの所属する指導者と選手であると思っています。なので、これは、一つの視点に偏らないようにするための選択肢の提示だと思ってもらえたらと思います。

 

今回の記事のテーマはこれです。

  • ミニバスや中学生ではディナイが義務付けられている?
  • 「ディナイをしない守り方をしていても、相手のスペーシングが良かったら打たれ放題じゃないか!」

 

 

◆ミニバスや中学生ではディナイが義務付けられている?

今、ミニバスと中学生ではゾーンが禁止されています。また、ゾーンのような守り方、マークマンから大きく離れる守り方も制限されています。コミッショナーという新たな審判のような人がいて、コミッショナーの判断で「マンツーマンではない」となったら旗が上がり、注意を受けるというもの。ディナイが半強制的に義務付けられているようなものだというコメントをもらいました。国際的にも強豪国は15歳以下でのゾーンを禁止しているようで、JBAの方針として「個の力を高めるため」としています。

つまり、「ゾーンをすることで勝利できるチームもあるが、そのことで育成世代に必要な技術力が身につかず、特にオフェンスディフェンス共に1対1の技術力が向上していない。だから、ゾーンを禁止して、個の力を高めよう。それが世界と戦うためにも、バスケットボールの楽しさを高めるためにも大切だ」ということです。(詳しくは公式のHPに載っているので気になる場合は、こちらからご覧ください。)

 

実際、ディナイをしない守り方をミニバスからやると、おそらく「頑張らなくても良いんだ」みたいな価値観になる子も出てくると思います。僕は目的がない「ただ頑張れ」の根性論は意味がないと思いますが、「何かを一生懸命に打ち込む時期」というのは必要だと思っています。大人は子供たちに自分の経験を元に、「こうやって進むとこうなるよ」という成功と失敗の物語を伝えていくことで教育していくのが役目だと思っています。でも、「子供の頃から、効率の良い最短経路を知って、それを忠実に進んでいけば、最短で成功できる」と思って、自分が成功した経験を押し付けてしまうのは教育ではありません。あくまで、選択肢は相手にあるべきもので、最初から効率の良い道だけを知るとどうなるかというと、「人としての深み」がなくなります。それに、最初から最短距離を伝えられたとしても、それが腑に落ちない状態で「これ、本当に意味があるのかなぁ」と思いながらやっていたら、結局、成長することはできません。

だから、ディナイというのも、最初は必要だと思います。最初から「ディナイは必要ないんだよ。相手のスペーシングが悪いと・・・」なんてことを言っても、子供たちからしたら「え?一生懸命守ることは意味ないの?」みたいになってしまうかもしれません。それだと「人としての深み」がなくなりますよね。これはイチロー選手が言っていたことです。元野球選手の稲葉さんとの対談の中で、「(今は情報がありすぎて頭でっかちになりがちですけど、その分、)最短で成功できる可能性もありますよね?」と聞かれたとき、

いや、無理だと思います。無理だと思います。失敗をしないでたどり着いたところで、全くミスなしで間違いなしで、そこにたどり・・・着けないんですけど、着いたとしても、深みは出ないですよ。単純に、野球選手としての作品が良いものになる可能性は、可能性ですよ、僕はないと思います。だから、やっぱり、遠回りをすることは凄く大事ですよ。無駄なことって、結局、無駄ではない。

と、イチロー選手は答えていました。

 

つまり、「ディナイをしない」という選択肢も「ディナイをする」という体験があって初めて深まるということです。そういう意味では、「ゾーンが禁止されている」という育成世代の制限は、目的も明確にあるし、とても良い流れなんじゃないかなと思います。1対1で攻めて守るというのが徹底される分、その後、違う選択肢が出てきたときに、更に深みのあるバスケットマンになれるからです。そもそも制度やルールといった変えられないことに不平不満を言っても意味がないと思うので、「なんでゾーン禁止なんだよ!」とか思う気持ちがあったとしたら、「制約をプラスに変えるにはどうしたら良いか?」を考えるのが大事だと思います。

ただ、問題があるとしたら、ミニバス中学の制限の目的がわからず、それがバスケットボールだと感じてしまうことです。前も話したとおり、ミニバス中学で1対1が中心のバスケットボールをしていて、1対1の技術力が低かったら、ディナイが強いチームに勝てなかったら、高校でバスケをしたとしてもその壁を越えられないからもうダメだ・・・みたいになってしまうと良くないですね。だからこそ、ミニバスや中学の段階から、ゾーンが禁止されている目的を正しく伝えること、そして、そのディフェンスを打ち破る方法を伝えることが大事だと思います。

 

 

◆ゾーン禁止で見落とされるもの

では、具体的に今ある問題を考えていこうと思います。

これは実際に僕自身が体験していたことであるし、ゾーンが禁止されている今、更に強まっていると考えられる問題です。それが何かというと、「ボールを持っていない時間の重要性が薄れている」「プレッシャーディフェンスを打ち破る方法が見つからない」ということです。

ゾーンを禁止することで個の力を高めるということは、素晴らしい方針だと思います。僕自身、中学生のときは「ゾーンをされたら、1対1ができないから楽しくない」って思っていたので、今もし中学生だったら凄く楽しいだろうなと思います(ゾーンオフェンスは凄く楽しいと今なら思えるんですけどね!)。でも、それは逆に言えば、個の技術力がなかったらディフェンス打ち破れない、試合では活躍しにくいということです。実際、今は言われている「個の力」というのは”ボールを持ったときの”技術です。今はアメリカを中心として海外からスキルが輸入されているので、オンボールの1対1やドリブルのスキルは飛躍的に高まっています。でも、その分、失われているのが「ボールを持っていないときの1対1」の重要性です。

 

「ボールを持っていないときの1対1」

というのは、渦の理論のようなスペーシングが一つ。

 

そして、もう一つは、

「バックドアカット」

です。

 

ゾーンを禁止することで高まる技術もあれば、その逆もあるのは自然な流れであるし、だからこそ、真逆の視点を考えることが大事だと思っています。ディナイ不要論を書こうと思ったのは、そういう背景があります。渦の理論は既に話しているので、バックドアカットの価値について話していきたいと思います。これがディナイをすることで見落としやすい、最も重要なことだと思っています。バックドアカット、凄いですよ。

 

 

◆バックドアの何が凄いのか?

バスケットボールの基礎はいくつもあります。シュートはもちろん、ドリブル、パス、ピボッド、ディフェンス、体力、努力、・・・どれも重要な要素ですね。ただ、バックドアカットは「バスケットボールの基礎」という言葉を聞いたときに、思い浮かぶ人はそんなに多くないと思います。それくらい、見落とされているのがバックドアカットであるし、たとえ、知っていたとしても、試合で使って成功させた経験がある人は少ないはずです。僕は「バスケットボールの基礎」として、ドリブルやパスと同じくらい「バックドアカット」が強調されていくべきだと考えています。

 

動画で見た方が速いですね。

(スクリーンプレーが絡んだ「裏を狙う動き」もあります)

バックドアカットの凄さは何かというと、

  • 誰でもすぐに身につく
  • ディナイを打ち破ることができる
  • 身長、体格、身体能力が関係なくなる
  • 誰でも相手に対して脅威を与えられる

というくらい、多くの効果があるところです。

 

ドリブル練習が身につくのには時間がかかるし、ジャンプ力を伸ばすことも簡単ではありません。その分、それらには価値があるともいえますが、バックドアカットの場合は「数分」で身につきます。「相手が表を守っていたら裏にカットをする」、これだけですよね。数分もかからないかもしれません。でも、誰でもすぐに身につけることができます。

前の記事で、ディナイを鵜呑みにしてしまうとよく起きることについてを話しました。「ディナイを練習する」→「オフェンスに問題があることに気づけない」→「ディナイが通用しなくて負ける」→「もっとディナイの練習をしないといけない(orどうやったら勝てるかわからない)」→「練習が厳しく、きつく、つまらないものになる」→・・・この流れを断ち切るのが「バックドア」です。ディナイを練習しているチームほど練習の中でバックドアカットがなくなります。なぜなら、「ディナイでボールを奪うこと」がチームのカラーだとしたら、そうなるような練習が増えていくからです。何とか表でもらおうとする技術も必要ですが、そのことで最も簡単で、誰でも相手に脅威を与えられるプレーを忘れてしまうのです。

 

ドリブルで相手を抜くことよりも、バックドアカットで相手を抜くことの方が簡単です。タイミングと少しのコツを学べば、誰でもバックドアカットでフリーが作れます。パスが入るかどうか、シュートが入るかどうかは、その次の問題です。ただ、バックドアカットをするだけでディフェンスは収縮されるし、プレッシャーをかけにくい状況が作れます。これは、「ドライブが上手い選手」がやっていることと一緒ですよね。ボールを持っているかどうかの違いがあるだけです。

「ドリブルで相手を抜く技術を身につけるのは時間がかかるけど、バックドアカットで相手を抜くのには時間がかからない」

ということが何よりも重要です。どうしてかといえば、最初から「チームに貢献できる」ということが体験できるからバスケが楽しくなるし、バスケットボールのレベルが上がるからです。バックドアカットの選択肢がない状態でプレーしていたら、ディナイが強いチームが勝つし、体格がないとボールがもらえないし、ドリブルが上手くないと相手を抜けません。だから、それらの技術がないと活躍できないんだ・・・と自分の可能性を制限してしまう選手もいるし、勝つ道が見えずに負け戦に向かって練習量だけが増えていくという指導が生まれてしまいます。

でも、バックドアカットを高めれば、「ディナイに対して何もできない」という試合がなくなります。練習環境で劣っていても、勝つ道が見えてきます。身体能力やオンボールの1対1で劣っていても、勝つ道が見えてきます。そして、今までディナイで勝ってきたチームは、バックドアへの対応を考えないといけないし、ディナイを更に深めていかなければいけなくなります。そして、「ディナイをしない守り方」を学ぶ必要性が出てきます。

 

・・・つまり、

 

ディナイ不要論を考えることで、

ディナイを打ち破る方法を探し、

オフェンスのレベルが高まっていき、

バスケットボールの次元が上がるということです。

 

 

今、日本のスポーツは部活動を中心に行われています。部活動をほとんどの人が経験して大人になるので、部活動がスポーツの土台を作っているという意味です。その部活動で、僕が今まで何人もの人から聞いてきたことが「走りこみの練習ばかりで練習がきついし楽しくない」「ディフェンス練習ばかり練習をするけど、オフェンスは特に約束事がない」ということです。

ディナイは一つの戦術として素晴らしいです。でも、それ以外の視点を学ばなければ、ディナイが通用しなかったら、ディナイを打ち破る方法がわからなかったら、バスケの楽しさも上手さも頭打ちになってしまうことがあります。そういった課題を乗り越えるヒントが「ディナイ不要論」の中にあります。真逆の視点を深めることで、ディナイが更に深まり、今まで見落としていた重要なことに気づけるようになります。

 

それでは、今回はこれで。

 

次回は、

ディナイが更に深まるってどういうこと?

というテーマで書いていこうかなと思っています。

最終的には、「ディナイの価値」に戻るという循環。

 

「ディナイをしない守り方をしていても、相手のスペーシングが良かったら打たれ放題じゃないか!」

について書くつもりでしたが、少ししかそのテーマに触れれなかったので、

それを次回は深める形の記事を書いていこうと思います。

次回がラストになるかなと思います。

 

今回もお読みいただき、ありがとうございました。

次の記事:ディナイ不要論⑥(完)~相手のスペーシングが良かったら打たれ放題じゃないか!~

 

 

 

PS.

バックドアカットは、通信講座「賢者バスケ」で深めています。バックドアカットの凄さは永遠と話せるくらい深いので、まだ賢者バスケに参加していない方は是非このタイミングで参加してみてください。バスケットボールの価値観がガラッと変わるはずです。色んな解説動画とかも配信していて、日本のバスケットボールの教科書を作るつもりで運営しています。賢者バスケの詳細は、こちらから。

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