前回の記事:ディナイ不要論⑤~ゾーン禁止とバックドアカットの価値~
ここまでシリーズものとして書いてきたディナイ不要論を今回の記事で一旦終わりにしたいと思います。もともと、このシリーズを始めようと思ったのは、ディナイを否定するためではなくて、ディナイを更に深めて、オフェンスの楽しさを広げていくためです。何かを高めようと思ったら、一つのことを徹底的に深める必要があります。でも、それを絶対視してしまったら、それ以外の選択肢が見つからなくなります。「一つのことを徹底的に深める」という意味には、「真逆の視点も深める」ということが含まれるべきだと思ってます。最後にそのことと、ディナイについてまとめていこうと思います。
◆「相手のスペーシングが良かったら打たれ放題じゃないか!」
ディナイ不要論は確かに面白い視点。でも、結局、相手のスペーシングが良かったり、シュート力がある相手には通用しないんじゃないか。・・・そんな風に思われている人もいると思います。それはその通りです。それはバスケットボールの勝負としての次元が高いので、相手を褒めながら駆け引きを競い合える素晴らしいバスケットボールだと思います。そういう場合は、ディナイをする必要性が出てくるはずです。それも「ディナイ不要」という視点を通すことで見えてくるものです。そして、それはただ「ディナイをするのが常識だ」という視点で出てくる必要性ではなくて、ディナイ不要の良さを知った上で見えてくるものなので、大きな差があります。ディナイをしないことにもメリットがあるし、ディナイにもメリットがある。その両方を知ることがまずは大事です。
ディナイをしないことでオフェンスの伸び代が見えるようになり、自分たちの最低ラインを上げることはできます。特に、「勝つためにはディフェンスを激しくして速攻を出すしかない!」みたいに思っているチームにとっては、ディナイをしない守り方をしてオフェンスを変えることで劇的にチームが強くなることがあります。実際に、そんなチームを僕は見ました。明らかにオフェンスに問題があるのに、ディフェンス練習ばかりをしていて、選手は練習がきつくてバスケが楽しそうではなかった。だから、ディナイ不要のディフェンスを伝えて、バックドアとスペーシングを伝えて、バスケットボールマンとしての最低ラインを先に上げました。そうしたら、「シュートを入れさせない」というディフェンスの目的が見えて、オフェンスは今までよりも上手くなり、結果として今まで勝てていなかったチームが試合に勝てました。そして、何よりもバスケットボールを楽しんでいました。その後、ディナイをしないと相手の流れを止められないとか、速攻を出すためには厳しいディフェンスも必要という課題が出てきたら、そこでディナイにまた戻ればいいと思います。そのときは、誰かにやらされての練習ではなくて、自分たちの意思で「ディナイの必要性」を感じているので、練習に対する意欲やディナイをするべきポイントを判断する力は、今までとは全く違ったものになります。これが一つのことを徹底的に深める良さです。
ディナイ不要論を発信する目的の一つがバスケットボールのレベルを上げることです。ディナイ不要というディフェンスを知り、相手のディナイを崩すバックドアカットを学び、自分たちはスペーシングを高めていけば、自然とバスケットボールのレベルは高くなります。今の日本の部活動では、「ディナイに何もできずに負けてしまう」「味方がどうやって動きたいかわからず、チームとしての一体感を感じたことがない」というチームがあります。そして、勝っているチームの中には、ただ監督に厳しくディフェンスをしろと言われて、やらされているバスケで勝っているチームもあります。ディナイ不要論を知ることで、そういう勝負が減っていけば、もっと日本のバスケットボールは面白く、全体のレベルが上がっていくはずです。
◆NBA選手はディナイをしていない?
NBAを見ていると、当然ですが、ディナイだけで試合が決まることはありません。「いやいや、NBAと比べたってどうしようもないでしょ」と思われるかもしれませんが、このブログはやっぱりNBAが土台にあるので、NBAで考えてみたいのですが、NBA選手たちは当然、身体能力も、1対1も、技術力も、スペーシングも、全てが世界最高峰のレベルです。もちろん、ディフェンスやスカウティングなども同様です。だからこそ、戦略という部分が重要になっています。エースを活かす戦術、シューターを活かす戦術、試合をどうやって運んでいくかという戦略、・・・あらゆる戦術を駆使して試合が行われています。
日本の部活動なども、そういう試合が増えていけばもっと面白くなるはずです。ディナイ不要論はチーム力を引き上げてくれます。バックドアカット、スペーシング、パックラインディフェンスは、バスケットボールマンとしての最低ラインを上げてくれます。「楽しい」という感情、「チームに貢献できるんだ」という実感をまず最初に感じることが大事です。そうしたらどんな練習にも意欲が出てきます。本来、意欲というのは自然と湧き上がってくるものです。自然と湧き上がるようにするのが指導者の役目です。そして、実際に、ディナイ不要論の立場に一度立ってみて、オフェンスを高めて、ディフェンスの目的を再確認したら、ただのフリーオフェンスでスペーシングの概念がないチームに優る可能性が出てきます。たとえ、相手よりも身体能力は1対1の技術力で劣っていたとしても。あくまで可能性ですが、当たって砕けろ精神で真っ向勝負を挑んでいくことだけがスポーツの面白さではありません。たとえ、可能性の話だとしても、身体能力や1対1の技術力で優るチームに「勝てるかもしれない」と思えることが何よりも価値があることなのだと感じています。
そのバックドアカットやスペーシングを学ぶ講座が賢者バスケです。
強いチームというのは、ディナイが厳しかったり、体格や身体能力が自分たちよりも優っている場合が多くあります。そういった相手に対して、同じようにディフェンス合戦をしていても、消耗戦になるので、体格や身体能力という差を埋めることは難しいです。何とかボールを表でもらおうとしても体格で劣っていたら、そもそもボールをもらうことも難しいからです。でも、バックドアカットがあれば状況を変えることができます。また、そういうチームと対戦すると、いくらディナイの練習をしていたとしても、「ディフェンスから速攻を出す」というスタイルは厳しいものがあります。めちゃくちゃディナイの練習をしてきたのに、結局、簡単にボールをもらわれるし、自分たちはフリーオフェンスで約束事がないから1対1で勝てない相手に何もできずに試合が終わる・・・という経験を僕自身してきました。だから、ディナイをしない戦い方も取り入れて、オフェンスに時間を使い、ディナイが通用しない相手にも対応できる力を身につけることが大切になります。これは、自分たちよりも練習環境や身体能力で優っている相手に何とか勝とうと必死にディフェンス練習をしていた頃の中学生や高校生の頃の自分に伝えたいことです。
「ディナイが全てではない。オフェンスをもっと学ぼう。
そして、ディナイの必要性に気づいたら、また戻ってきたら良い」
そう、伝えたいです。
そうしたら、チームメイトに厳しく当たる必要もなかったし、もっともっと時間を効率よく使って、楽しくて上手いバスケができたはず。考え方を少し変えて、少しだけ勉強をして知識を身につけるだけで変われるなら、今すぐ学んで試してみなよ。・・・と伝えたいですね。ただ、効率の良い道も量をこなしたから見えてきたもので、中学高校の時間のおかげで書ける記事なのでチームメイトたちのおかげですね。ただ、「無駄だとわかっていても、あえて遠回りをすることが大事」ということを言いたいわけではありません。この視点を知った今、僕と同じように、ディナイで見落としていることがあると思えるのなら、今すぐ、行動をしてみてほしいです。そうしたら、本当にチームが変わりますから。チームが変わるということは簡単にできることではありません。今までのやり方を変えることも簡単にできることではありません。でも、ここまでの記事を読んで、「今のままだと行き止まりになる」と感じたなら、その直感を信じて変えてみてほしいです。その先にある未来は今よりも確実に面白くて良いもののはずです。変化させたら何かしら壁が出てきますが、それすらも楽しい変化の内です。真逆の価値観を学ぶときほど勇気がいることはありませんが、それは最初だけです。最初の一歩だけ踏み出したら、真逆の視点を取り入れる面白さに気づけるはずです。
・・・ということで、これでディナイ不要論は終わりたいと思います。
今回は「ディナイ不要」という立場で書きましたが、逆の立場で「ディナイ必要論」という立場で書いたとしても、結論は同じようなものになると思います。結局、どちらも必要で、どちらの良さも活かすことが一番大切ということです。また何かテーマが生まれたら、新しい記事を更新することがあるかもしれません。今回のシリーズをきっかけに、ディナイをすることで見落としていたものに気づいて、チームが更に強くなり、そして、バスケを楽しめるチームが一つでも増えたら嬉しいです。最後までお読みいただき、ありがとうございました!
PS.
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