ディナイ不要論③~敵を味方に変える守り方とパックラインディフェンス~

この記事は6分で読めます

前回の記事:ディナイ不要論②~「ディナイをするなんてもったいない!」~

それでは、だんだんと具体的な話をしてこうと思います。今回は「ディナイをしない守り方」をチーム全体で落とし込んだ話をしていきます。前回は、ボールマンのディフェンスとその隣のディフェンスについて、二人のやり取りを中心に考えていきました。「ディナイをするなんてもったいない!」と言いたくなるような状況というのは、前回の視点を通して試合を見れば、おそらくいくつも見つかるはずです。それくらい、実は「相手のスペーシングが悪いけど、自分たちがディナイをすることで損をしている」ということが起きることが多くあります。

今回の話、このシリーズは、特に「ディナイの練習をたくさんしているけど勝ちに繋がらない」「練習でディフェンス練習をたくさんやっているけど、勝てないし、つらいし、練習がきつくてバスケが楽しくない」というような気持ちがある指導者や選手の方にこそ、読み進めてほしいと思っています。そういうチームにとっては、劇的にチームが変わる可能性があるからです。そうではなくても、最初にも話したとおり、真逆の視点を学ぶことでディナイディフェンスが更に高まるということもあります。なので、あらゆるチームに当てはまる話をしていこうと思います。

 

◆ディナイをしない守り方

ディナイをしない守り方とは、つまり、「相手のドライブをカバーすることを優先する守り方」ということです。形としては以下の図のようになります。名称は「オープンディナイ」「サギング(下がって守ること)」などがあります。

(ディナイをしないでカバーを優先する)

 

◆ディナイをしないデメリット

まずは、このディフェンスの弱点から。

  • パスが回される
  • スティールがしにくい
  • キャッチ&シュートが打たれやすい

これらは、イメージしたらすぐわかると思います。なので、これが絶対的という話ではありません。ただ、そもそも、バスケは得点をゼロ点に抑えることはほぼほぼ不可能なスポーツなので、大事なことは「優先順位」を付けることです。「これはやられても仕方ないけど、これだけは守ろう」「相手がこういう攻めが得意だから、これだけはまずは止めよう」というのを決めることが大事で、それがあればチームが崩れることもないし、「なんでやられるんだよ!」とストレスを選手やチームメイトに感じることもなくなります。こういう雰囲気って数字には表れないけど、凄く大事です。

「おい!やられるなよ!」とか「またそこかよ」みたいな空気とか声がけをしてしまうと、それってプレーの全部に影響します。ディフェンスのやる気がなくなるだけじゃなくて、そもそもプレーするやる気がなくなって、無気力状態になったりビクビクしてプレーすることになります。だから、「ここだけは守ろう」という優先順位をつけることが大事です。この辺りの指導の面で今の日本にある課題に繋がりますが、それはまた次回以降の記事で。

 

という、デメリットを踏まえたうえで、

「ディナイをしない守り方」を見ていきましょう。

 

 

◆「パックラインディフェンス」

まず、わかりやすく具体例を話します。ディナイをしないディフェンスに「パックラインディフェンス」というものがあります。これはアメリカのバージニア大学がやっているディフェンスで今では色々な場所で広まっています。約束は、ディナイをする守り方とは真逆のことがいくつかあって、まとめるとこうなります。

<約束>

  • ベースラインを抜かせない
  • ディナイをせず、カバーを優先する
  • ボールマンはプレッシャーをかける
  • (ポストに入ったらダブルチーム)

図で表すとこうなります。

 

「パックライン」とは、旧スリーポイントライン辺りの仮想の線のことです。「このラインから下にドライブをされないように守ろう」というチームの共通の線のことで、ボールマン以外の選手はパックラインよりも上には(基本的には)いないようにします。つまり、相手のシュート圏内だけを守り、ドライブを防ぐのがパックラインディフェンスです。

詳しくは、こちらの動画を見てみてください。

 

 

どうしてベースラインを守るのか?

一般的に、ディナイディフェンスと並行して指導されるのが「ノーミドル」です。ミドルライン(内側)を抜かせずにベースライン(外側)を抜かせるという守り方。そして、三線がヘルプをして逆サイドがローテーション。・・・という流れが一般的です。

これも一つの守り方ですが、

「ディナイ不要論」から考えると、「ベースラインを抜かせない」という約束事の方が良い循環を生みます。そもそも、この一般的なベースラインを抜かせて三線がヘルプに出るという守り方の問題点は、

  • 三線が遅れると簡単に点が取られる
  • ゴール下の選手がヘルプに出るため、リバウンドが後手になりやすい

というのがあります。自分たちが身長で相手に劣っている場合は、理想論ではこの守り方でプレッシャーをかけて守れますが、現実的にはそうはいかないことが多くあります。それに対して「おい!三線!」と言っても、選手からすると「いや、、、三線に出たら自分のマークにリバウンド取られるから出にくいんです・・・」という気持ちになることがあります。そこで「ディナイ不要論」の出番です。

 

 

◆ベースラインを抜かせないと何が起きるのか?

・味方がカバーをしてくれる

・三線がヘルプに大きく出る必要がない→リバウンドが弱くならない

 

ベースラインを抜かせる守り方だったら「三線がいなかったら、そのままレイアップを打たれる」というイメージが頭のどこかにありますが、ベースラインを抜かせない守り方だと、必ず誰かしらディフェンスがいるという安心感があります。「いや、どっちもヘルプがいるっていう味方の信頼があれば同じですよ!」という風に思うかもしれませんが、ここからがディナイ不要論の面白いところ。やっと本題という感じですが、ここまでの話を踏まえると「繋がり」が見えてくるはずです。

 

 

◆ディフェンスの人数を増やす

ディナイをせず、ベースラインを抜かせないと何が起きるのか。ゴール下のディフェンスが・・・と言ったことをさっきは書きましたが、それよりもポイントになって面白いのが「ディフェンスの人数が増えること」です。つまり、味方が増える。敵が味方になる。・・・どういうことかというと、前回の記事と繋がってきます。この守り方をしていると、相手のスペーシングが自然と悪くなるのです。結果、オフェンスがオフェンスの邪魔をしてディフェンスをしているような状況になります。

なぜなら・・・ベースラインを守っているから。

 

ディナイをしていると、オフェンスの心理としては「ボールをもらえないから動こう」といってディナイされていない側に動いてポジションチェンジをしたり、バックドアカットをしようとして動き回ります。その結果、自然とオフェンスに動きが生まれます。ディフェンスのおかげでオフェンスに動きが生まれる。

 

一方で、ディナイをしないと・・・

「ボールも回るし、止まっててもボールもらえるから動く必要ないな」

っていう気持ちにオフェンスはなります。

 

だって、動かなくてももらえるなら、

わざわざ動いて疲れる必要ないよねって思うからです。

 

そうなると、どうなるのか。

そして、ベースラインを抜かせないことでオフェンスは自然とコートの中央に集まってきます。ベースライン側にディフェンスが構えているから、空いている方向、先ほどのディナイとは逆方向に向かっていきます。ここまでの話を5対5の状況で考えて、図に表すとこんな形になります。

ディナイをされていない

→ベースラインを守れている

→上に上がって中央に集まる

→いつの間にか、スペーシングが悪くなる

 

実際は、スペーシングをしっかりと学んでいないチームほど、もっと無法地帯ともいえるようなオフェンスの選択肢が狭まったスペーシングになります。以下の図みたいに、シュート圏内にいない選手、シュートの準備ができていない選手、とりあえず動かないとと思ってスペースを狭くしている選手、とりあえずスクリーンをかけようとしてる選手など、オフェンスの連携が難しい状態になります。オフェンスがディフェンスをしているかような状態。もはや、敵が協力してくれているような感覚になります。

これ、オフェンス目線になるとどう思いますか?

 

「狭い・・・」

「ドライブできなさそう・・・」

「パス出したいけど、シュートの準備できてなさそうだな・・・」

みたいになりそうですよね。

 

結果、どうなるのか。

 

相手が強そうに見える

ってことがあります。

 

実際は、自分たちのスペーシングが悪いだけなのに、自分たちではそれに気づけず、いつの間にか相手の罠にはまってしまい、相手のディフェンスが凄く強く見える。もしくは、自分たちのオフェンスが凄く悪く見える。でも、その原因はわからない。パスは回るし、ディフェンスも激しいわけではない。・・・あれ?でも、なんか攻めにくいな。いつでもシュート打てそうだけど、いつもと違うからシュートも打ちにくいな。なんか変な感じ。・・・という

 

「不思議な雰囲気」

 

を相手に感じさせることができるのがこのディフェンスです。

最初の方で話したとおり、声がけとか雰囲気もバスケのプレーに関係しています。怒鳴れば選手は萎縮するし、「悪くないよ!」と言えばミスをしても前に進んでいけます。そして、「なんか打ちにくいな。ディナイはないけど」という雰囲気を相手に与えたら、シュート力が高くても、ちょっとでも「迷い」が生まれたら普段よりはシュート率が落ちます。そういう戦い方ができる可能性があるのが、この守り方です。スペーシングとか雰囲気が関係しているので、これはパックラインとはまた違った話になります。

 

 

◆声でオフェンスを迷わせる

雰囲気を利用するっていうのと似ているのに「声でフェイクをする」っていうのもあります。特に、このディナイをしないディフェンスだと有効になります。普通、「ディフェンスの声出せ!!」と言われるときって、「ボール!ボール!」「三線!三線!」っていう感じになるかなと思います。これには「フェイク」っていう選択肢はありません。これの方向性が間違ってしまうと、「声出さないとディフェンスをサボっている」っていう感じで思われると、それは良くない循環が生まれてしまうんですけどね。

声のフェイクとしてはこんな感じ。

こういう声を出せるのもディナイをしていないからこそ。むしろ、こういう駆け引きをしないと「ただの引いて守っている緩いディフェンス」になってしまいます。これはただ「ヘルプに出れる」ってことを伝えてボールマンのディフェンスにプレッシャーをかけてもいいよってことを伝えるだけではなく、相手に対しても圧を与えることができます。「ドライブいいよ」と言ったら「じゃあ、ぶち抜いてやる!」ってムキになる人もいるし、「え、じゃあドライブはできないのか」ってなる人もいると思います。どちらかを試していくのも面白いですね。

あとは、大事なのは「声ではカバーをすると見せているけど、意識は自分のマークマンに向けている」っていうのも有効です。つまり、カバーがいけるっていうのを声と身体で示しているけど、意識自体は自分のマークマンなので、パスが出されてもかなり早く対応できます。「見た目は子供、頭脳は大人」じゃないですが、これも使えるし、面白いです。こういう「遊び心(駆け引き)」が生まれるのも状況を冷静に見えるから。そして、「スペーシング」というオフェンスの理解があるからです。

 

 

 

今回の記事は以上です。

 

今回はだいぶ具体的な守り方を話したので、ディナイをしないディフェンスがどういうものかがイメージがついたではないかなと思います。今回の記事だけでも、チームによってはディフェンス力が一気に向上することもあると思うので、パックラインディフェンスを参考にして独自のディフェンスを創り上げてもらえたらと思います。ただ、まだ記事は続きます。今回折り返しくらいかなと思います。ディナイを更に深めていきましょう。

それでは、また次回。ご意見などあれば是非教えてください。また、共感することがあれば、SNSでのシェアや身近にいる指導者やバスケ仲間にシェアしていただけたらと思います。ネット使って、日本のバスケを更に面白くしていきましょう!

 

次の記事:ディナイ不要論④~ディフェンスをしながらオフェンスをする~

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • LINEで送る

関連記事

    • ミニバスファン
    • 2018年 9月9日

    こんにちは。
    いつも楽しく拝見させてもらっています。
    今ミニバスではマンツーマンディフェンスの推進が行われていまして、かなり厳しく見られています。
    2線、3線の体の向きがマークマンではなくボールに向いていると旗が振られ注意を受けます。
    2線目はルールでディナイしなさいと決められてるも同じです。
    パックラインディフェンスはドライブからの得点が多いミニバスでは有効だと思い、使おうと思ったこともありますが、今では反則扱いです。
    戦術への知識があっても使えない、悲しい状態です。
    しかしながら、ディフェンスが決まっている分、それを打ち破るオフェンスは考えやすく、浸透させやすいとも考えられますね。
    あと、ミニバスには是非スリーポイントを導入してほしいと個人的には思います。スリーがないとクローズアウトを教える意義が少なくなってしまいます。

    管理人様も日本の将来を担う子たちのミニバスを久々に観戦してみてください!

RETURN TOP