「左手は添えるだけ」
もはや、バスケをやっていない人ですら知っているほどの名言。漫画『スラムダンク』の名言を挙げるとしたら、おそらく誰もがトップ5に入れたくなるセリフだと思います。シュートを打つときのガイドハンド、右利きの人の場合は「左手」のことですね。左手はシュートのリリースには関わらないようにするのが良いとされていて、それがバスケの常識であるとすらいえます。
NBA選手のシュートは芸術品並に綺麗です。
綺麗に左手をボールに添えて、綺麗にリリースをする。
そんなNBA選手たちを見ていると、「やっぱり左手は添えるだけなんだな」と思えるし、実際に多くの指導現場では「左手は添えるだけ」という指導がされているのが一般的だと思います。シュートフォームの良し悪しでシュートが入るか入らないかが決まるので、自分のシュートフォームを見直すことは大切なことですよね。
でも、
NBA選手の中には、左手を添えるだけではない選手も多くいます。
それも、世界最高峰のリーグの中で「シューター」と呼ばれるような選手がそうしていることがあるし、決してシュートが苦手だとされていない選手もそうしている事例があります。左手はむしろ使え?
左手を”使う”NBA選手たち
代表的なのは、この四人です。
Stephen Curry, Kyrie Irving, Dirk Nowitzki, Kevin Love.
四人ともNBAのスリーポイントコンテストに出場した実績があり、四人とも明らかにシュートが得意な選手たちです。NBAという世界最高峰のリーグの中でもシュートが上手いと言われている、いや、むしろCurryやNowitzkiなんて歴史に名を残すほどの神様シューターですよね。笑
「左手を使って打っている」
という意識があるかどうかはわかりませんが、
確実に言えることは、左手は添えるだけではないということです。
◆Nowizkiのシュート
— NBAで凄いのはダンクだけ⁉︎ (@nbanotdankudake) 2017年4月7日
よーく見ると左がリリースに関わっています。
「左手は添えるだけ。」…これも一つの選択肢であって、答えではないということなのかもしれません。自分に合ったフォームを!https://t.co/xSt6HO9Kf0
意識が指先に向かうデメリット
「左手は添えるだけ」という考え方は、一つの選択肢であると言えそうです。
一般的には、左手がリリースに関わるとシュートの方向がぶれやすくなるので、左手を使わずに右手だけでシュートを打つ練習などが行われます。この場合、「右手の指先がリングに向かっていればシュートは入る」というある種の科学的な理論的な考え方が成り立っています。左が関わらなければ右手の方向次第でシュートは真っ直ぐ飛ぶという考え方です。
でも、これにはデメリットもあります。
それは、指先に意識が向かいすぎることです。
指先に意識が向かいすぎるとどうなるかというと、「ボールをどうやってキャッチしようか」「シュートはどうやってリリースしようか」「左手の位置はこの辺で、左手を離すのはこのタイミングで」「リリースをした後のフォロースルーの形は、右手がここで、左手はこんな形で」…という具合に、「ボールを真っ直ぐ飛ばすこと」ではなくて形ばかりを気にしてしまいます。
意識が近くに向かいすぎるとどうなるかというと、力が下から伝わってきたのに、指先にばかり神経が向かってしまい、その「流れ」が切れてしまって不自然なシュートになってしまいます。流れが切れてしまうので力は伝わりにくいし、何よりも「シュートフォームばかりを気にしてしまいシュートを打つことを躊躇してしまう」ってことが起きやすくなります。なんで、こんなに文字でベラベラとしゃべれるかというと、僕自身がその「呪縛」にかかっていたからです。(スラムダンクは大好きなんですけどね!!笑)
意識が細かいところに向かえば向かうほど、
特に試合中には動きがバラバラになってしまいます。
細かい部分に意識を向かわせたり、シュートフォームを変えることが悪いとは思っていません。間違った漢字を100回練習していてもテストでは丸をもらえないように、間違ったシュートフォームをしていればそれが結果としてでてきやすいからです。正しい動きを無意識の中に落としこめるようになれば、シュートのときに細かいところに意識が向かわなくなるので、そこまで行くのがフォームを変える一つのゴールだと思います。でも、「間違い」っていうのは、本当に曖昧な言葉であって、誰かが言っていることは一つの選択肢であって誰にでも当てはまる答えではありません。むしろ、今回のように常識が正しいとは限らないことの方が多く、大切なことは自分の身体に合っているかどうかだと思います。具体的にいえば、「自分の身体にとって楽かどうか」ですね。
左手を…、フォロースルーは…、リリースのタイミングは…
ということを一切気にしないで、「身体全体でボールを真っ直ぐ楽に飛ばす」ということを意識してシュートを打ってみると、意識が細部に行かずに、より自然な形でシュートを打つことができます。左手を使っているNBA選手たちは、「言われてみればそうだね」というくらいの認識なのかもしれません。「左手は添えるだけ」という呪縛から解放されれば、自分の世界が広がることがあります。「シュートは入ればフォームなんて関係ない」とは極論で、フォームを常に試行錯誤するのは大切だと思っていますが、答えは自分の身体に聞くってのが大切ですね。Leonardもシュートフォームを変えて今のようになったみたいですね。
自分で答えを探せるような教育をバスケから。
いつもながらの余談です。
僕はこういった発信をしていることもあって、自分自身が教育について考えることが多いし、教育現場を見ながら思うこともたくさんあります。バスケを指導している人の中には、「これが絶対だ!」というような指導が未だにあります。バスケの価値観はそのまま日常生活の価値観になるので、言われたことだけをただこなすような人間に成長してしまえば、その後も自分で考えて行動することはできなくなってしまいます。
自分で答えを探せるような人を育てることもスポーツ指導者の役目だと思います。だって、せっかくバスケットボールを始めた子にとっては、とっても楽しい時間だし、大人から何かを学べるとても良い機会だからです。「バスケを通して人間を教育する」なんていうと綺麗ごとに聞こえるかもしれませんが、大人はこれからの時代性も考える必要があります。これからは、今以上に時代が変化するスピードは上がるだろうし、常識だと思っていたことが崩れたり、新しい生き方が生まれたり、情報がさらに多くなったりと、自分で情報の良し悪しを決める力が問われてくるはずです。
「この道も正解だけど、あの道も正解」
という状態になったら、「どっちが正解なんだ!!」ってなりますけど、
自分が正しいと思った方、自分の身体が正しいと言っている方が正解であって、どちらも正解。
そんなことが世の中で起きてくる、既に起きてきていると思います。
「ボールのセットは、頭の右側から」
「肘がLの形になるように90度を意識する」
「手の平をつけずにボールを扱う」
これらも一つの選択肢であって絶対的な正解ではありません。
Curryのように頭の右側からシュートを打つ選手もいれば、Durantのように頭の中心(左寄り)からシュートを打つ選手もいます。これらには「利き目」が関わっていると身体の構造上考えられるように、自分の身体にとって合う合わないは変わってきます。最近だと、Lonzo Ballのシュートフォームが話題ですが、シュート速いし入るし、もはやあのシュートフォームに”美”を感じてしまうほどです僕は。笑
日々進化を求めて…。
最後に、
スラムダンクは大好きです!笑
今日のテーマに関する動画はこちらから。
PS.
発信仲間の、師匠の慎さんがブログを始めました。
古武術から進化した「武学」という分野をバスケと掛け合わせている発信です。「上善如水」という何千年も前から残り続けている言葉、「最も良い生き方は水のようになること」をコンセプトにバスケの動きや思考を柔らかくさせてくれるブログです。本質の本質を探る発信。
その中で、今日話した「身体の声を聞く」っていうことについて書かれています。これを読むと如何に頭で考えることが勿体ないのか、どうやったら身体の声を聞けるようになるかがわかると思います。46億年の記憶を…!(というと大げさに聞こえてしまうかもしれませんが、とりあえず読んでみてくださいね!)
ではまた!
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