【第4話】プロの世界と変人師匠

【第1話】世界で一つだけのバスケゴール
【第2話】「キツイ練習をしないと勝てない」
【第3話】椎間板ヘルニアとNBA選手の凄さ
【第4話】プロの世界と変人師匠←今ココ
【最終話】NBAで凄いのはダンクだけ⁉

 

 

 

トライアウト当日。

 

全国各地からプロになりたい人が集まるトライアウトという場は、

実績が何一つない自分にとっては全国大会のような感覚がありました。

 

過去の自分がどんなプレーをしていたかを知る人は一人もいません。

 

だから、今、この場で見せるプレーが

「自分のプレースタイル」になるという、

凄く新鮮な感覚があり、程よい緊張感がありました。

 

 

そして、トライアウトを終えた後、

運よく、ありがたいことに声をかけていただき、

プロチームの練習に参加させてもらえることになりました。

 

プロになれることが保証された立場ではありませんでしたが、

プロの選手と一緒に、朝から筋トレをして、チーム練習の一部に参加させてもらい、

シューティングのボール拾いをしたり、スタッフの方の仕事を手伝ったり、練習の準備や片づけをして、

空いている時間は筋トレか自主練をするという毎日。

 

本当に貴重な時間でした。

 

チームに関わる全ての人が

プロフェッショナルという言葉の通り、

バスケットボールに人生をかけて向き合っていて、

当然のことながら、バスケの上手さも異次元でした。

 

「全国」「世界」という世界を何一つ知らなかった自分にとって、

プロ選手のシュート力、身体の強さ、バスケの上手さ、外国籍選手の身長や規格外のプレーは、

「次元が違う」としか表現できないものがありました。

 

 

ボール拾いが必要ないんじゃないかと思えるほど、

ほとんど全てのシュートがリングに当たらず入るシューティング。

 

1対1をお願いしてやってもらっても、

すぐに20点以上の差がつく1対1の強さ。

 

そもそも身体の大きさが違うので、

コースに入ったとしてもレイアップに持っていかれて、

「もう外が落ちるのを祈るしかない」と思って離して守っても、

一向に落ちないシュート。

 

本当にどうしようもありませんでした。

 

まさに、お手上げ状態。

 

 

「ああ、こんなに上手かったらバスケ楽しいだろうなぁ(笑)」

という気持ちと同時に、こんなことを思ってしまいました。

 

 

「このまま練習をしていても、一生追いつけないんじゃないか…?」

 

過去の自分よりもどれだけ成長できたか?がバスケの楽しさで、

戦術やオフボールの動きも合わせてバスケの上手さが決まるから1対1が全てじゃない…ということを

大学生の頃に知ったとは言え、

 

とは言え、・・・

 

これだけの圧倒的な差を体験したことがなかったので、

「このままでは一生追いつけない」と思ってしまいました。

 

 

毎日、プロ選手の皆さんがどれだけシューティングをしていて、

どれだけ筋トレをしていて、身体のケアやバスケのことを考えているのかを知ったからです。

 

だだでさえ、実力も、身長も体格も、練習時間も差があるのに、

今のまま、同じように筋トレをして練習をしていたら、一生追いつけない。

 

 

高校の部活が終わった時、

大学でヘルニアになった時と

まったく同じような感覚になりました。

 

 

身長も低く、身体の細く、ジャンプ力も瞬発力もない。

 

だから、プロ選手と同じように

朝から筋トレをして、体幹トレーニングをして、

体育館が使える時はドリブルとシューティングをしまくりましたが、

それだけでは限界があると感じました。

 

 

 

・・・そんなとき、ある人を思い出したのです。

 

 

=====(回想シーン始まり)=====

 

僕が大学生の頃、
「変人」の言葉がふさわしい先輩がいました。

 

その先輩は部活は入っていなかったのですが、
よく一人で体育館にバスケをしに来ていました。

 

バスケといっても、ほとんどボールは使いません。

 

いつも鏡の前で何やらぶつぶつ言いながら、
ディフェンスのフットワークをしていたり、
何やら謎な動きをしながら淡々と身体を動かしていました。

 

 

学科の先輩だし、バスケをしていたらしいので、
とりあえず、何をしているのかを聞いてみました。

 

すると、こんな答えが返ってきたのです。

 

 

「最近は、ずっとJordanの動きを研究してる。
Youtubeで見まくってるんやけど、身体の使い方が凄い」

 

 

 

・・・身体の使い方!?

 

 

Jordanといえば、バスケの神様。

当時の僕は、NBA選手からボールを持っていない動きは学べると思っていたのですが、
さすがにNBAでもずば抜けた身体能力があったJordanからは学べることはないと思っていました。

 

なので、
「Jordanは身体の使い方が…」と言われても、
「この人は何を言ってるんだろう???」状態。

 

でも、詳しく話を聞いてみると、
とても面白いことを教えてくれました。

 

 

変人先輩

「つよしは、シュート打つとき、身体はどこを向いている?」

 

「えーーっと、身体はリングに正対させてますね。」

 

変人先輩

「なるほどね。それは誰かに教わったの?」

 

「そうですねぇ。DVDとか本とか買って勉強してるんですけど、どこを見ても『身体はリングに正対させる』って書いてあるんで、そーいうのを読んでから意識して練習するようになりました。」

 

変人先輩

「なるほどねぇ。Jordanの動きを今研究してるんやけど、Jordanは身体をリングに正対させないんよね。”Jordanの身体にとって”一番自然な状態でシュートを打ってるんやないかと思ってる。あと、ドライブもすげぇ。古武術の動きを使ってる。」

 

「え!?そうなんですか?古武術??」

 

変人先輩

「古武術ってのは、身体を捻らないとかね。ナンバ歩きとか。日本の武士がやってた動きのことなんやけど、Jordanはそういう動きをしてるから歳をとっても活躍し続けていたんだと思うんだ。おれもまだまだ勉強中やけどな。」

 

「そうなんですね~。(専門用語でよくわからないなぁ。古武術なんてなんか古臭いし、なんかカッコ悪そう。)」

 

 

その後、よく1対1をしたんですが、
何かと先輩の動きは”普通とは違う”感じで、
ドライブもシュートも普通とは違った「速さ」がありました。

 

瞬発力で抜いていくるというよりも、
なんとなくヌルヌルと抜いてくる感じ。

 

どっちに来るか予想できるのに反応が一歩遅れる。
止めた!と思ったら止められてなくてスルスルと抜かれる。

 

「なんだかディフェンスをしている気がしない」

という不思議な感触がありました。

 

どうやってるんですか?

と聞いても、

「ドライブは水みたいにやるのがいいんやないかと最近思ってる」

とか訳のわからない回答ばかり。

 

 

大学時代の先輩に対する僕の印象は、こんな感じでした。

 

「なんか凄そうだけど、よくわからない」

 

 

だから、この時は深く学ぶこともなく、

先輩とバスケをすることもなくなりました。

 

=====(回想シーン終わり)=====

 

 

その先輩の名前は、マコトさん。

今は「武学籠球」という発信をしています。

 

大学生の頃、
慎さんの言うことが謎でした。

 

「力を使わないでドライブをする」

「水のようにドライブをしたらいい」

「古武術の動きをJordanは取り入れている」

「相手の力を利用できたら力は使う必要はない」

 

 

でも、プロの世界で限界を知り、

自分の道が見えなくなっていた僕は、

「今の自分に必要なのはこれだ…!」

と感じて、すぐに慎さんに連絡をしました。

 

「これなら力がない自分でも戦えるかもしれない」

そんな少しの期待を胸に富山に向かいました。

 

そして、実際に会って話を聞いたり、
大学生以来、数年ぶりに1対1をしたりと、
久しぶりに慎さんの変人バスケを体感しました。

 

 

すると・・・

 

慎さんは、大学の頃から更に動きが進化していて、
明らかに、今までの僕とは違った世界でバスケをしていました。

 

 

力を入れてディフェンスをすればするほど簡単に抜かれてしまう。

 

言葉にすると、これまた漫画みたいですが、

実際に、体験すると、どうやってもこんな表現になります。

 

 

・・・と言っても抽象的ですね(笑)

 

百聞は一見に如かずということで、
お時間があれば動画を見てみてください。

 

動画だけを見ると、

「ディフェンスが緩いだけ」

という風に見えると思います。

 

実際、ディフェンスをしている僕が後から動画を振り返っても、

なんでこんなにディフェンスができていないのかわからないほどです。

 

ただ、動画からでも、

力や身体能力で押し切っているわけではない

というのは伝わると思います。

 

パワーで押し切っているなら「うわーすげぇ!」って思えるんですけど、

力に頼らない動きでプレーすると、何となく見ても達成感がないと思います。

 

 

「力では到達できない世界」

という言葉が武術にはあります。

 

武術の達人と呼ばれる人たちは、
歳をとればとるほど動きが洗練され、
年齢、体重、体格、筋量に関係なく、
相手を”いなして”勝つことができる不思議な人たちです。

これは三船十段という柔道家の映像です。

「やらせなんじゃないか?」と思えるほどの映像ですが、

それくらい不思議なことが武術の世界には実際にあります。

 

 

「武術」って言葉に、どんなイメージがありますか?

 

人によっては、「古臭い」とか「古武術バスケって昔流行ってたよね」とか、

そういうイメージがあるかもしれませんし、柔道や剣道をイメージする人もいると思います。

 

武術というのは、簡単にいうと、

日本人が昔から培ってきた価値観の一つで、

「人間の身体がもっている能力を引き出すきっかけ」

です。

 

柔道とか剣道は、昔の日本人がつくってきたことを今でも引き継いでいて、

筋肉に頼らない動きで速さを出したり、体重差だけで勝敗が決まらない動きを追及したりしています。

 

それはバスケに応用できるものであるし、

どのように応用するかは、受け取る人の自由です。

 

 

僕は、武学籠球の慎さんから武術について直接教わっていますが、

慎さんからよく言うのは、

「武術っていうのは、その人自身を表すもの。生かすも殺すも、その人次第。武術に正解が合わるわけでもなくて、どうやって受け取って、どうやって取り組んで、どうやって組み立てていくかが全て。その全てが正解。武というのは、師匠と弟子の関係性を軸に、数千年前から進化発展し、今も進化し続けている世界。師匠が正解なわけではないから、師匠の教えをもとに、自分なりの何かを創っていく必要がある。武術は自分を知るツールであり、独自のものをつくるきっかけ」

ということです。

 

 

僕は慎さんと同じ動きはできませんが、慎さんから学んだことを活かして、

今は力や練習量に頼らないドライブやシュートというのを自分なりにつくっています。

 

その一つが「ピボットジャブ」です。

ピボットという技術は、ミニバスで習うような基礎ですよね。

使う場面というのは、パスを出すときにアングルを作りたい時とか、ボールをキープしたい時とかだと思うのですが、

実は、1対1をするときにもピボットは凄く有効です。

 

パワーやスキルで相手を抜くのではなく、

ピボットでタイミングをコントロールすることで

相手を反応させずに、最小限の力で抜けるようになります。

 

身体能力や練習量に関係なく、バスケを上達させていけます。

 

本当に面白いですし、

これができるようになると、

ドリブルからの1対1やシュート、ディフェンス、ピック&ロールの使い方など、

その他の技術も、一段高いレベルでプレーできるようになって、

バスケがもっと面白くなると感じています。

 

この「ピボットジャブ」については、

今後の発信で詳しく解説する場を創っていきます。

 

 

 

今は誰でも世界中の情報にアクセスできる時代です。

 

そんな時代だからこそ、日々、

僕らは最新の情報を受け取れるのですが、

便利な反面、何が正解かわからなくなったり、

新しいものばかりを追いかけるあまり、自分や本当に大切なことが見えなくなったり、

そういったことが起きているのも、現代の特徴の一つです。

 

 

そんな時代だからこそ、僕は「変わらないもの」を追いかけていきたいと思います。

 

それは、武術のように数千年前から受け継がれているものだったり、

ピボットのような誰でも教わるような基礎だったり、学ぶ楽しさだったり、いろいろです。

 

そういった、時代に左右されないものを軸に、

新しい知識や様々な人の視点を深めていって、

もっとバスケを面白いものにしたいなと思います。

 

 

 

 

・・・と、話が深まってしまって、

自分の物語を進めるのを忘れていました。

 

自己紹介の途中でしたね。

 

 

そんなこんなで、僕は慎さんから武術という世界を本格的に学びなおして、

自分なりの「力や練習量に負けないバスケ」というのを探るようになりました。

 

もともとは「プロ選手に負けないために」

という理由で学び始めた武術の世界でしたが、

学んでいくうちに、自分が本当にやりたいことが何か?

ということが見えるようになってきました。

 

 

本当にやりたいことは何か。

 

それはやっぱり、

NBAの凄さに気付いてバスケの世界が変わった

大学時代の部活動にありました。

 

 

2016年の春、とあるバスケットマンと再会したのがきっかけに、

僕の情報発信は、今まで以上に多くの人と関われるようになったんです。

 

(続く)

 

 

【最終話】日本のバスケはいつ変わるのか?

RETURN TOP