前回の記事:速攻①「2対1をどう作るか?」
今回は、「バックカット」を速攻で使う考え方を紹介します。バックカットは誰でも学ぶ動きだと思いますが、意外と「深める」というところまではいかないものなんじゃないかなと思います。僕自身、バックカットを技術として教わった経験はなくて、セットプレーの最後のプレーとして教わったり、相手がディナイをしてくるから反射的にバックカットをしていたという程度で、そこまで焦点を当てて学ぶことはありませんでした。だからこそ、バックカットを学んだとき、バックカットから広がる駆け引きやパスの楽しさに夢中になってしまいました。
さて、速攻でどのようにバックカットを使うのか。
前回はカッティングを使って2対1を作りましょうというものでしたが、このカッティングでバックカットが使えます。前回は、”最初からアウトナンバーが生まれている時に”カッティングをすると2点と3点の駆け引きが生まれるということでしたが、今回紹介するバックカットが有効になる場面はアウトナンバーが生まれていない状況を含みます。もちろん、アウトナンバーが生まれている状態でもバックカットは使えますが、今回はアウトナンバーが生まれていない状況について話していきます。
「速攻でのバックカット」
と聞くと、どのようなのを思い浮かべるでしょうか?
そもそも、バックカットをあまりやらない、技と言えるまで深めたことがない教わったことがない、チームでそこまで共通意識として「バックカット」を見える化していないということもあると思います。僕自身が学生の時はそうだったので。なので、まずはバックカットがどういうものかを紹介するとこんな感じです。
パス名「ヨキッチパス」
— 原田毅@NBAで凄いのはダンクだけ!? (@nbanotdankudake) January 9, 2018
・相手を引き出すフェイク
・ワンハンドバウンドバス
・バックカットの技術
これは何回でも見てられる。
pic.twitter.com/MA0sli35yA
素晴らしいバックカット&パスですね。
このプレーだけでも、かなり色々な技術があって、ヨキッチのパスの出し方とかボールの扱い方だけでも記事が書けそうですが、今回はバックカットの仕方に注目してみます。「バックカット」と言葉でイメージされるのが多くの場合、この動画にあるように「相手を引き出してバックカット」だと思います。上でもらうよって見せてディナイさせてタイミングをずらしてバックカット。ただ、これが速攻だとちょっと変わってきます。バックカットはバックカットでも、速攻で使えるバックカットはちょっとやり方が変わります。(もちろん、引き出すのも使えます)
速攻でのバックカットはこんな感じです。
(そのシーンから動画が始まります、1分くらいだけでも見てください)
この動画は全部面白いので後で全部見てほしいですが、ポイントになるバックカットはクリックして流れる部分です。
動画では「Stop&Go」という風に表現されています。これが速攻のバックドアです。そう、ただ走っているだけでスピードを変えているだけなので「こんなの簡単なんじゃないか?」と思えると思います。そう、走るだけなので簡単なんです。ただ、自分でやってみて感じるポイントがあるので解説します。ただ走るだけではなくて「ポジションをずらす」っていうのが成功させるうえで大切になります。
「ポジショニング」ってありますよね、あれは、
「このポジションにいると、スペーシング的にいいから味方に合わせやすくなる」
っていうものなんですが、
ここで、視点をちょっとずらすと、
「そのポジションを”ディフェンスに”守らせることができる」
とも言えます。
どういうことかというと、ディフェンスをそのポジションにハメるって感じです。ポジショニングをしっかりしていると、スペーシングが良くなってプレーしやすくなるというのもありますが、ディフェンスが”そのポジションを”守ってくるのでタイミングをこちらがコントロールできるということです。図で表すとこうなります。
45°のポジションに入ろうとすると、そこをディフェンスは守ろうとしてきます。45°はウィングポジションなので基本となるポジション。なので、ディフェンスもそこを守ろうとしてきます。そこを守らせて、相手が「まもr(守ろう)」とした瞬間にカットをするとタイミングをずらせます。言葉だと表現が難しいですが、「守ろう」とする直前のところは気が緩みやすかったりするので、その瞬間を狙います。もちろん、最終的にはディフェンスとの駆け引き。
このポジションからのバックカットはパスも入りやすいし、パスを取りやすいです。なので、ポジションを守ることが速攻でも大事になります。コーナーからでもできると思いますが、コーナーから流れでカッティングをしようとすると、ちょっと角度的に難しいです。なので基本は45°かなと思います。
で、更に、細かいところを補足で話しておくと、
「バックカットをするときに、圧を出さない」
っていうのも大事になります。
圧を出すっていうのは、
「相手を引き出して、軽くジャンプをしてカットをする」という感じです。
最初に紹介したこのバックカットがそれです。あれだと、相手は「来る」ってのを感じるで身構えます。圧を出す場合は相手を引き出してカットなのでハーフコートの場面とかで使いやすいかなと思いますが、速攻の場面で有効なのは「圧を出さない(しれ~っと)カット」です。イメージはこんな感じ。
◆しれ〜っとバックカット
— 原田毅@NBAで凄いのはダンクだけ!? (@nbanotdankudake) January 11, 2019
フロアを蹴らず、足音を立てずに歩くかのように動き出すと、ディフェンスに動きを察知されなくなる。これを速さを出してやっていたら相手に気づかれる(時には速さを使うことも必要)。オフボールも基本は1対1。
pic.twitter.com/DOxf8kRqsX
ようするに、「蹴らない」「カッティングするぞ!感を出さない」ということです。これを走りながらやると、タイミングをずらしやすいです。単に走るのがバックカットなんですが、一つのバックカットだけでも深めていくと色々あります。今回のように、速攻の場面でのバックカットのポイントをまとめると、
・ポジションを守らせる(スピードを緩めながらポジションに行こうとする意識を出す)
・しれ~っとバックカットする(圧を出さずに相手が反射的に反応できないようにタイミングを外す)
になります。ひとまず、2つに絞ると。
あとは、もちろん、パスとかカッティングする選手、守る選手の能力とか場面によっても変わってくるので、その辺りは実践してみてですかね。文字と図で客観的に解説をすると、こんな感じになります。具体的な部分はこれでは解説するのには限界がありますが、イメージを共有する、考え方をまとめる上では使えると思います。紹介したYoutube動画も時間があれば是非見てみてください。Coach Danielさんの動画はどれも素晴らしいです。
これが速攻であると、駆け引きが一つ増えます。
バックカットは共通意識を持って味方と連携しないと、なかなかパスが通りません。パスが通らないから「カッティングしてもパスもらえないからいっか」となって、バックカットをすることが減るなんてこともあります。でも、バックカットの共通理解があると「パスが入らなくてもいいからカッティングをしてディフェンスを動かそう」っていう意識になって、チーム全体の「軽さ」に繋がります。何よりもバックカットはする方もパスを出す方も楽しいです、ディフェンスとの鬼ごっこみたいなものですからね。
速攻で「あ、アウトナンバーがないから一本ハーフコートオフェンスにしよう」って落ち着くのもいいと思いますが、このチャンスを見逃すのはもったいないので是非やってみてください。ちなみに、パスを出すポイントを書いておくと「ボールマンが目線を45°にいる味方にうつした瞬間にカッティングをする」とかの共通意識を作っておくとパスは通りやすいと思います。僕はまだ数回しか体験していないので、早く実践してみたいですね。
では今回はこれで。
PS.
ちなみに「しれ~っとバックカット」の原理は、ドライブでも使えます。圧を出さない、蹴らない、反応されにくくするというものです。こういうカッティングとかドライブは、どうしてもやっている自分が「こんなので抜ける気がしない」っていうイメージが(身体の中に)あるので腑に落ちるまで時間がかかるし、見ている方は「(こんなので抜けるなんておかしいから)ディフェンスが手を抜いているんじゃないか?」と思えたりしますし、これを教えるとなると教わった側も「もっと具体的なことを知りたい」「もっと汗をかくようなキツイものをやりたい」っていう気持ちになることがあります。だから伝えるのも腑に落とすのにも時間がかかったりしますが、一度、体験して少しでも身に付いてくると病みつきになります。僕もまだまだですが、こういう動きはとても面白いです。これが全てではもちろんないですが、バスケの駆け引きを広げてくれるし面白いので、これからもこういうのも広めていきたいなと思います。余談でした。
自分でやってみて一番大きな効果というか変化は、ドライブの時に視野を保てることだと感じてます。相手とのぶつかりもなく、グッ!って表情が固くなることもないので、冷静に次の予測ができます。
— 原田毅@NBAで凄いのはダンクだけ!? (@nbanotdankudake) March 11, 2020
pic.twitter.com/bZ5hlOO5mv
PS.
コロナでバスケができない時期が続いていて、「バスケしたい!」ってなっている人は多いと思います。僕はというと、もちろんそういう気持ちがあるんですが、実はNBAとか全然見ていないんですよね。なぜかわからないけどたぶん「いつバスケができるようになるかわからない」ってのがある気がします、なんだかバスケの動画を見ても体育館ですぐやれるわけじゃないので気分が乗らないのかなぁと思ったり。こういう記事を書いても「明日から実践してみてください!」と言えないからなんだかなぁとなりますね。なので、僕のYoutubeに出てくるお勧めの動画は「NBA」から「料理」に変わりつつあります(笑)料理は昔から作りますが、コロナをきっかけによりハマってしまいそうです。でも、飲食業界が今は大変なので僕が定期的に行っていたお店とかには顔を出してお金を落とすようにもしています。そんな感じですが、今できることをしていくしかないですね。僕にとっては今、速攻についての考えをまとめたいなと思うタイミングだったので、引き続き、記事を書いていこうと思います。(コロナについてはちょっと書ききれないのでPDFでまとめようと思います、一つのオファーも最後にします。)
PS.
Devin Harris、ルーキーの頃から知ってるのでなつかしいですね。いつの間にか引退していたけど、このカッティングの動画を残してくれてありがとう!最初に、あの綺麗なジャンプシュートを見た時は感動したなぁ。
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