今回は、ポストにボールを入れた後の選択肢について紹介します。
NBA選手のプレーを見ていると、「なるほど。こういう選択肢もあるのか」と新しい気付きをたくさん得られます。その一つ一つを「コツ」としてインプットしていけば、映像を見ることで自分独自の教科書を作ることができます。知識を得てから実践してみてコツを身に付けるのではなくて、映像を見ることによってコツを頭の中で創っていき実践して身に付ける。この視点があれば、NBAを見ることが最大の学びになります。自分たちの試合映像を見ることが一番の学びになります。
知識を学ぶことも重要です。それがあることで、今まで見えなかった部分が見えるようになります。でも、頭でっかちになってしまって「こういう時はこうしないといけない」「この場面はこうやって動かないといけないと教科書に書いてあった」という風になってしまうと、バスケットボールの自由度は下がります。あくまで、知識は身に付けて活用できるようにして価値が生まれるもので、知っているだけでは価値はありません。実践することが何よりも大事で、使えることが重要です。そうであるからこそ、知識から実践もいいんですが、「実践から知識」という順番でもいいのだと思います。実際、僕はそうやってずっとNBAからバスケを学んで、NBA選手たちが実践していることをコツに変えています。
この考え方で試合映像を見れるようになれば、指導者の方も頭でっかちになって「これをやりなさい」という枠に選手をはめることもなくなります。そして、選手たちも自分たちの試合を見ることで誰かに教わらなくても自分たちでコツを創ることができます。そうやっていけば、指導者も実践を踏まえた知恵を指導できるし、選手たちは実践を踏まえた知恵を教われるので、より指導者の言葉が響くようになります。是非この「実践のワザ化」というのを参考にしていただけたらなと思います。
それでは、ポストにボールを入れた後の選択肢を紹介します。
大前提
ポストにパスを入れた後の選択肢はいくつもありますが、大前提は「ポストマンの1対1」です。
これは当然、シュートを打てるのがボールマンだけだということが理由であるし、この意識がなくなってボールマンが周りの選手にパスを入れるだけで守るのが楽になります。ポストでボールをもらえば、オフェンスは落ち着くことができるし、攻めることでディフェンスの収縮が起きてプレッシャーディフェンスをかけにくくなります。なので、ファールをもらってでも、シュートが入らなかったとしても、攻めきることも時には必要になります。
それを前提として重要になるのが周りの選手のスペーシングです。ポストにボールが入ると、ポストマンの技術力に関係なく、少なからずディフェンスは収縮します。それだけゴールに近いところでボールを持つことが有利だということなんですが、ポストマンの1対1を活かすためには周りの選手が良いスペーシングを保つことが必要です。その際、以下の画像で示しているポジションには基本的にオフェンスプレイヤーはいない状態を作ります。ここはポストマンが攻めようと思ってゴールを見た時に、死角となるからです。NBAを見ていればポストにボールが入った時に、コーナーには基本的にオフェンスプレイヤーがいないことがわかると思います。
この大前提があって、初めて、これから紹介していくプレーが活きてきます。
①パス&ラン
一番シンプルな攻めです。ボールを入れた瞬間にカット。ただ、この時、パスのタイミングが少しでもズレると相手に取られてしまいます。ここではヨキッチはワンハンドでパスを受けて、そのままワンタッチでパスをしています。このタイミングであれば相手に取られません。絶妙なタイミングです。
単純なパス&ラン。ワンタッチ。
— NBAで凄いのはダンクだけ⁉︎ (@nbanotdankudake) 2018年12月19日
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パス&ランをするときは、ベースライン側をカットするときもあります。その際、前提のところで話した通り、ポストマンの背中側を通ることになるのでポストマンの死角にディフェンスプレイヤーが入ることになります。なので、ボールマンはスティールされやすい場面でもあるし、逆に言えばディフェンスはスティールをするチャンスでもあります。ヨキッチはそれを見越して(スティールをあえて狙わせて?)ディフェンスがスティールしてくる瞬間にパスを出しています。これはカットする選手も理解していないと自分のディフェンスがスティールしにいっていることに気づかず、ダブルチームでつぶされてしまうということが起きます。意思疎通とプレーの理解が大切。また、この時のマレーはフロント側をカットするフェイクをしています。一度きちんと止まっているからこそ、ディフェンスも止まるしかなくなり、後手に回っていますね。こういう細かいところも見方次第で学べます。
◆ポストにボールを入れた後の2対2
— NBAで凄いのはダンクだけ⁉︎ (@nbanotdankudake) 2019年3月1日
ヨキッチとマレーのプレーがお手本すぎる。ヨキッチの前側をカットするフェイクをして背中側をカット。緩急。背中側は死角になるためディフェンスがスティールを狙うことが多いため、いつでもボールを受けられるように。
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②スプリットカット
これはウォリアーズが得意としているプレー。スプリットカットと呼ばれる動きで、パスを入れた選手がトップにいる選手にスクリーンをかけます。このとき、単純にスクリーンをユーザーが使うだけではなくて、バックドアをしたり、スクリーンをすると見せかけてカットをしたりと、ディフェンスの対応によって様々なパターンが生まれます。ここに駆け引きの面白さがありますね。ウォリアーズのスプリットカットは全チームわかってはいるものの止められません。それだけ超一流の駆け引きがスプリットカットにあるので、動きとしては一つのシンプルなスクリーンプレーですが、何十通りもパターンがあるように見えます。
スクリーンを使うと見せて使わない、スクリーンをかけると見せてかけない。実際の試合では「しっかり忠実に」だけではなくて、「賢く不真面目に」も必要。ウォリアーズのわかってても止められないsplit cut。
— NBAで凄いのはダンクだけ⁉︎ (@nbanotdankudake) 2018年1月7日
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③ハンドオフ
ローポストの選手と2対2をするパターン。これはあまり見られないシーンで、多くの場合はポストにボールを入れたらそのままボールマンが攻めますが、それだけではパワーとパワーの勝負になったり1対1頼みになってしまうことがあるので、選手の個性やゲームの流れによってDHOの選択肢も持っておくといいと思います。このシーンでボールを持っているプラムリーはポストで攻めるというよりはハンドオフやピックからチャンスを作ることが得意な選手なので、ハンドオフに切り替えてチャンスと作っています。ボールをもらう選手はバックドアの選択肢を持つことが重要で、このシーンは綺麗に決まっています。ポストにボールがあれば周りの選手は基本的に収縮するし、ほとんどの場合がそこで攻め始めるので、気を緩めることも多いと思います。だからこそ、ローポストからのハンドオフは凄く有効だと思います。
◆ローポストからのDHO
— NBAで凄いのはダンクだけ⁉︎ (@nbanotdankudake) 2019年1月14日
この発想があればローポストマンの攻めのパターンは増える。それも、チームメイトが絡むプレーだからチーム全体が変わる。素晴らしいバックドアとパス。
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同じような要領で、そのまま渡すパターン。
ローポストで攻める
— NBAで凄いのはダンクだけ⁉︎ (@nbanotdankudake) 2019年3月6日
かと思いきや、ハンドオフ
これまた素晴らしい、ヨキッチとマレーの2対2。ローポストにパスを入れた後の2対2だけでも駆け引きとアイディア次第で無数の選択肢がありますね。NBAはバスケの教科書。
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その他
紹介してきた3つの選択肢が基本になると思います。1対1にプラスして、上記の選択肢があるだけでチャンスは創りやすいです。後は駆け引き次第で、いくらでもプレーは生まれてくるので、その一つ一つのプレーを「コツ」に変えていってチームで共有すれば選択肢は更に増やしていけます。その他、ポストにボールを入れた後の選択肢をいくつか紹介します。これらはセットプレー的なものです。
Mid Post Hand-Off
これはヘイワードがいた時代のジャズがやっていたセットプレー。ポストにボールを入れた後に、バックスクリーンをかけたヘイワードがボールをもらいに来ます。バックスクリーンをかけた後にボールをもらうことは非常に有効で確実にディフェンスとのずれが生まれます。それに、ユーザーが下から上に向かってボールをもらいに来ると、スクリナーはゴール方向に体を向けている状態でパスを出せるので、スイッチをされそうになったらそのままゴールにアタックできます。
Punch Backdoor
これは本来、エリックゴードンにスリーを打たせるプレーです。ポストにパスを入れて逆サイドにカットすると見せかけて、トップのスクリーンを使うというもの。それをロケッツはやっていたのですが、相手チームがそれの対策をしてきたので、じゃあその対策の更に裏をかこうということでバックドアをしているシーン。戦術が広まることで更に高い戦術が生まれて、駆け引きの選択肢が増えて、バスケットボールが更に面白くなっています。
Houston Rockets “Punch Backdoor” Set for Eric Gordon pic.twitter.com/6MjjlhYRWi
— Half Court Hoops (@HalfCourtHoops) 2019年3月6日
チーム内の対人も同じ要領で、お互いにやってくることが分かっているから更に高い駆け引きが必要になりますよね。「戦術を隠して、いざ本番でやる」というのも戦略の一つですが、それがすぐに対応されたりそれでは通用しなかったりしたら、「隠しておいた時間がもったいなかった・・・相手に読まれたし通用してないからどうしよう・・・」という状態に試合ではなってしまいます。そうなることもあるので、それを考えると、戦術を隠す隠さないを気にするよりも相手に読まれても臨機応変に対処できる対応力や発想力、駆け引きを普段の練習から身に付けていくことが得策なのかもしれませんね。
以上が基本的なポストにボールを入れた後の動きです。
これらは数ある選択肢の一つでしかないので、その他のプレーも調べてみると面白いと思います。あくまでここで紹介したのは、ポストにボールを入れた後の基本的な動きで、これらの動きから駆け引き次第でいくらでもプレーは生まれてきます。チームや選手の個性に合わせて参考にしていただけたらと思います。NBAの凄さに気づいて視点が変わると、NBA選手たちが僕らに「バスケってこうやってやるんだよ」ということを教えてくれるように思えてきます。そうやって思えるようになると、自分たちとはかけ離れたところにいるNBA選手たちから自分たちのバスケを上達させるヒントを学べます。知識を映像を通して学べたら、あとは実践すれば自然と自分たちに合った形が身に付いていきます。NBAで凄いのはダンクだけじゃないですね!
PS.
最初の大前提のところで話した、ポストマンの死角に関してはディフェンス目線で考えるのも面白いです。ジョーダンのラストショットは、その前のプレーでジョーダンがポストマンの背中側からスティールをしたから生まれました。NBAを見始めた時にジョーダンを知ってラストショット知りましたが、あの時、もし今の視点があれば、ラストショットからスペーシングや今回の記事の内容にまで辿り着けたかもしれないなぁなんてことを少し思いました。当然、当時は「NBAはやばい」で止まっていて凄さは見えていなかったし、ウォリアーズのスプリットカットもヨキッチもいないし、Youtubeもなければ、この記事も存在していません。だからこそ、今、NBAを見るのが本当に面白いし、バスケをプレーするのも面白いなぁと思います。
ローポストの死角を狙ってチームとして守る方法もあります。
これも記事にしてあるのでチームディフェンスの参考にしてみてください。
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