スパーズのオフェンスシステム解説~Motion Offense~

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今回は、サンアントニオ・スパーズのOFシステムを紹介します。

スパーズは、説明不用かと思いますが、毎年必ず好成績を残し、毎年プレーオフに出場する強豪チームです。その安定したバスケットボールは、ポポビッチHCの手腕を中心にして、スタッフや一人一人の選手の意識の高さから生まれているのだと思います。スパーズの選手は個人の能力も非常に高い選手が多いですが、それらを活かしているのは、チームのシステムです。

 

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目次

  1. チームプレーを生み出す意識
  2. OFシステム解説

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1.チームプレーを生み出す意識

まずスパーズのオフェンスは、「より確率の高いシュートを打つ」ことを目指しています。バスケットボールはシュートを多く入れることがOFの目的であるので、確率の高いシュートを打つことはどのチームでもあっても共通する同じ目的であると言えますが、スパーズの場合は”徹底して”確率の高いシュートを打とうとしているように見えます。

スパーズは、パスアウトやスクリーンプレーも超一流です。ブレイザーズをスイープした2014年のプレーオフでは、ブレイザーズのPGリラードが『スパーズのスクリーンは苦痛だよ。本物のスクリーンをかけてくるんだ。スクリーンをセットして保持するのが素晴らしく上手い。それですごく消耗させられる。』と話していました。華麗なスクリーンプレーとパス回しでDFを翻弄していることがわかります。スゴい…。ただ、そんなスパーズのパス回しを見て「パスの回数を増やせばいいんだ!」と考えることは危険です。

 

スパーズはパスの回数が確かに多いですが、ただパスをしているのではなくて、一人一人が攻める意識を持ちながらプレーをして、自分よりもフリーの状態の味方がいるからパスを回すという”結果”、パスの回数が多くなっています。それを見落として、攻める気もないままただパスを回していても、DFを崩すことはできず、ただ何も起きずに時間が過ぎていくだけです。一人一人が攻めているところがスパーズ、NBAの凄いところですね。

 

 

2.OFシステム解説

では、具体的にスパーズのオフェンスシステムがどうなっているのかを解説していきます。

まず、スパーズのオフェンスシステムは「Motion Offense」を中心に行われています。モーションオフェンスとはフリーランスのオフェンスではあるのですが、スクリーンプレーなどの約束事が決められているオフェンスのことです。モーションオフェンスは、フリーランスオフェンスよりも約束事が決まっていますが、セットオフェンス(Hornsなど)よりも自由度が高く、DFの対応に従って自由にプレーをすることができます。「ある程度の約束事は決まっているけれど、選手の動きは自由である」ということを前提にして動画を見ていきましょう。具体的なオフェンスシステムを紹介します。

 

◆Motion Weak

①モーションオフェンスの基本形

まずモーションオフェンスの基本は、以下の画像のようにしてボールマンとウイングプレイヤー(2と3)で所謂「三線」の形を作ります。この時、4はボールマンとは逆のサイドを走り、ボールマンからパスを受けられるようにな準備をします。この状況でDFが崩れていたら、パスを受けた選手、もしくはボールマンが自由に1対1をすることができます。

weak1

②Weakサイドにパス

この状況でボールマンがWeak sideにパスを出したら、Motion Weakに入ります。センターの4はボールサイドに移動してパスを受ける準備をします。パスを受けたウィングプレイヤーは、自分で1対1をする・ローポストの4にパスを出す・トレーラーの5にパスを戻すの選択肢の中からその場で有効になるであろうものを選びます。5番にパスをしたらMotion Weakの次のアクションが進んでいきます。

weak2

weak3

③ウィングプレイヤーのクロススクリーン

トレイラーの5を経由して1がボールを受けようと移動してきたタイミングで、ウィングプレイヤーの3はセンターの4にクロススクリーンをかけます。流れを止めずに、5は1にパスを出します。ここで一つのスクリーンプレーが起きているので、4のポジションでシュートを打つチャンスが生まれます。

weak4

weak5

④5のダウンスクリーン

クロススクリーンをかけて3は、その後トレーラーの5からスクリーンをもらいます。ここで連続して「クロススクリーン→ダウンスクリーン(Flex action、STSなどと呼ばれるスクリーンプレー)」が起きることでDFはかなり守ることが難しくなります。

weak6

 

【Motion Weak 実例】

 

 

◆Motion Strong

①モーションオフェンスの基本形

まずモーションオフェンスの基本は、以下の画像のようにしてボールマンとウイングプレイヤー(2と3)で所謂「三線」の形を作ります。この時、4はボールマンとは逆のサイドを走り、ボールマンからパスを受けられるようにな準備をします。この状況でDFが崩れていたら、パスを受けた選手、もしくはボールマンが自由に1対1をすることができます。

weak1

②Strongサイドにパス

ボールマンがStrong sideにパスを出したら、Motion Strongに入ります。DFの状況を見て1対1を狙いながら、トレーラーにパスを出して、トレーラーはそのまま逆サイドのウィングプレイヤーにパスをします。

strong1

strong2

③ダブルスクリーン

ガードの1とトレーラーの5で、ウィングプレイヤー2に対してスクリーンをかけます。この時、スクリナーの選手はウィングプレイヤーのDFに向かってスクリーンをかけることが大切です(スクリーンプレーの基礎)。また、トレーラーのスクリーンの位置が高くなりすぎると、2がシュートを狙うことができないため、エルボーあたりでスクリーンをかけることもポイントです。この後は、動画を見てもわかるとおり、自由にHornsや2Men gameに入り、流れを止めないようにプレーを繋げていきます。

strong3

【Motion Strong 実例】

 

◆Motion Loop

次はMotion OffenseのZipper cutから始まるシステム。これはトニー・パーカーが得意とするもので、Zipper cutをした後にガードに対して3人がスクリーンをかけるオフェンスです。このようにエンドライン側で3人が一人に対してスクリーンをかけるスクリーンプレーを「Floppy」と呼びます。

①Zipper cut

Loop1

②ウィングプレイヤーにパス

Loop2

③ガード1に対してトリプルスクリーン(Floppy)

この時ポイントは、スクリーンの基礎の通り、ガード1に対してではなくて、ガード1のDFに対してスクリーンをかけること。また、ポイントは(この画像だと)左サイドでスクリーンをかける3と5の位置です。3が5よりもゴールに近い位置でスクリーンをかけることで、ガード1がパスを受けられなかったときに、両サイドのスクリーン(4・5)を使って3が次のパスを受けることができます。そうすることで流れが止まらずにプレーを繋げることができます。

 

 

 

以下はMotion Offenseではないものを紹介します。

●Hammer Set

ボールがない方のサイドでフレアースクリーンをしてコーナーで3Pを狙うシステム。いつ見ても美しいオフェンス。コーナーの選手に対する”さりげない”スクリーンも一流のNBA選手ならではのプレー。パサーは、ほとんど体がエンドラインを越えた状態でパスを出すのでDFはスティールをすることはできません。

 

●Shuffle (Slice Stagger) Motion

次々と連続してスクリーンプレーが行われるシステム。最初はバックスクリーンからのアリウープを狙い、その後にセンターに対してスクリーンをかけ、最後にダブルスクリーンと繋がっていきます。個人的に見ていて面白いので好きなセットです。ポイントは、一つ一つのスクリーンプレーでDFに対応されたとしても、流れを止めることなく、次のスクリーンプレーを開始していくというところ。どのオフェンスシステムでも共通する基礎ですね。

 

●Weadge Roll

パーカーがボールマンとなり、オンボールスクリーンを効果的に行うシステム。トレーラーの選手に対してウィングプレイヤーがスクリーンをかけて、トレーラーがボールマンにスクリーンをかけることで、トレーラーのDFは二つ目のスクリーンの対応に遅れます。また、最初にスクリーンをかけてウィングプレイヤーは、その後コーナーに移動して、コーナーでもシュートのチャンスを作ろうとしています。それぞれが得意なプレーを活かすシステム。

 

 

●Hawk Action

トップの選手にバックスクリーンをかけた後、ボールサイドでオンボールスクリーンが起き、逆サイドではダブルスクリーンを起こすシステム。

主なフォーメーションは以上です。

基本的にはモーションオフェンスが行われていて、これはおそらく個人的な基礎力(ドリブル、ハンドリング力、フットワーク、シュート力)があり、スクリーンプレーの基礎をある程度理解している日本の高校生以上のチームなら真似できるものです。そして、何となく空いているところにパスを出している、何となく動き回っている所謂フリーランスオフェンスよりも、自由にプレーすることができる可能性が非常に高いです。※自分がこの発信を始めるとても大きな経験になった大学でのバスケでは、モーションオフェンスをチームに導入しました

 

 

スクリーンプレーのポイント

・一つ一つのプレーに駆け引きがある

NBA選手がスゴいのは、一つ一つのスクリーンプレーを駆け引きをしながら実行しているということです。今日紹介した動画を参考にすればわかりますが、スクリーンプレーは決められているけど、OFの動きはDFの動きに合わせて変えています。バスケットボールが対人スポーツであるので、DFの動きに合わせてOFの動きが変化していくことが特徴ですが、一つ一つのスクリーンの使い方が上手すぎます。

・ゲームの流れを止めない

そして、一つのスクリーンプレーが成功(シュートまで繋がらない)場合であっても、試合の流れを止めないで次々にプレーが繋がっていきます。スクリーンプレーを丁寧に行っているけど、だからといってゲームの流れを止めないようにしています。スゴい。(参照記事:ゴールデンステイト・ウォリアーズ Flow Offense

・Unselfishなプレー

最初にも話した通り、ここが一番のポイントですね。どんなに良いフォーメーションがあったとしても、味方とチームを信頼する気持ちがなかったらチームプレーは生まれません。Unselfish(自己中心的ではない)なプレーがあるからこそ、スクリーンプレーが上手く行き、勝ちに近づきます。そういった面で見ても(プロということも関係していると思いますが)、NBA選手はバスケットボールを「チームスポーツ」という認識をし、チームのために尽くす姿勢は尊敬です。

 

 

世界最高峰のバスケットボールリーグNBA。

世界最高にバスケが上手い選手が集まり、世界最高の知識を持ったコーチがいて、世界最高の技術を持ったスタッフがいて、世界最高の試合を楽しみにするファンがいる。NBAは高い身体能力を活かしたプレーももちろん見応え抜群ですが、それ以外のフォーメーションやバスケの基礎も、それぞれの選手の努力やスタッフやコーチの努力の結晶であり、いつ見ても感動します。NBAをもっと楽しみ、NBAからバスケを学び、自分たちのバスケも楽しいものに変えていきましょう!

 

 

 

PS

僕自身がスパーズのバスケを応用したことでバスケットボールの価値観が180°変わったこともあり、スパーズに関しては思い入れが強いです。今でも一番好きなチームで、今年も応援しています。スパーズのオフェンスシステムは見ていて感動するほど美しいし、それを応用できたことは人生の中でも最高に楽しい時間でした(形だけではなくてスペーシングやスクリーンプレーの細かいところをNBAから学んだからこそ応用できました)。この発信の全てにそれらの経験が活かされています。NBA選手、スパーズ、大学のチームメイト、インターネット、全てのおかげです。ありがとう!!

動画を全て見たら、たぶん学校の授業よりも多いですよね(笑)一つの授業だと思って参考にして頂けたらと思います!NBAはやっぱり楽しいし、バスケはやっぱり深くて楽しい。下手くそですが、まだまだバスケはやめられそうにありません。

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    • shirou
    • 2017年 7月18日

    ウィークサイドとストロングサイドという用語はいろいろな使われ方がしていると思いますが、アーリーオフェンスでの使用では「ボールマンから見て、狭い方のサイドがウィークサイド、広い方のサイドがストロングサイド」ということがわかりました。ありがとうございました。

    • shirou
    • 2017年 7月14日

    楽しく拝見しております。

    モーション・ウィークとモーション・ストロングと呼ぶさいのウィークサイドとストロングサイドは何のことを指しているのでしょうか?

      • バスケのヨシ
      • 2017年 7月15日

      こんにちは。
      コートを半分に分けてボールマンから見て、狭い方のサイドがウィークサイド、広い方のサイドがストロングサイドです。狭い方にパスを出せばモーションウィーク、広い方に出せばモーションストロングが開始するのが基本形です。

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