東京で大和籠球の指導者合宿を開催しました。
関東を中心に全国から(遠くは新潟・静岡から)集まった大和籠球の同志の皆さんと2日間、体育館で実践しながら学び合いました。
一言で素晴らしい時間でした。
そして、凄く大事なことが詰まった時間だったと感じます。
実施した内容をまとめます。
〇1日目
・大和籠球とは何か?
・大和籠球には教えがない
・なぜ指導者の目的を明確にするのか?
・立志ワーク(指導者の理念作りワーク)
・大和三軸(礼・志・同志コミュニティ)
・心意体の統一(お辞儀のチカラ)
・観自在(全我)
・自分が感じる問題は自分が解決すべき課題
・シュートの指導法
・ドリブルの指導法
・ピボット、プレッシャーリリース
〇2日目
・大和とは?
・自他不敗の精神
・心の整え方
・ムスビワーク(全我)
・選手の課題は指導者の課題
・プリンストンとは何か?
・プリンストンを創るための3つの指導ポイント
・ダブルパンチの指導法
・エントリー「ローポスト」
・5メン(切り替え)
・ボール運び(Shadow・Serbia)
・バックカット最強ドリル
・Dribble atの指導法
・RONDOの実践
〇技術や戦術指導の前に大事なこと
今回、はじめに「志を立てる」「指導者としての在り方を整える」というワークを行いました。
志とは人生の目的という深いものなのですが、スポーツにおいては「指導者の理念」のことになります。大和籠球では「志」という侍の心を表すパワフルな日本古来の漢字を使っています(この言葉自体にもとても大きな力があります)。
これらは指導者の皆さんは指導を始めた当初に持っていると思います。でも、忙しい指導現場では忘れてしまうことがあるのではないでしょうか。
今回、改めて自分自身の指導人生を振り返り、自分自身は何のために指導をしているのか?何のためにバスケットボールに関わっているのか?を言語化しました。これらを言語化することで、乱れた時に戻れる場所を創れるのでブレなくなります。
こういったワークを一人で行ってもいいのですが、同志と共に感情を共有することが大切です。一人では自分のズレに気付けないし、乱れた時に整えることが難しいです。でも、志を持った仲間がいれば共に整え、共に成長していけます。
そして、その志を立てた後、指導者の在り方を整える必要があります。
指導には3つの段階があります。「教育→指導→和導」です。和導は僕ら大和籠球が創った造語です。厳密には教育の前に「支配」という良くない構造もあります。
教育と指導、和導は、目の前の選手とチーム状況に合わせて使い分ける必要があります。ただ、多くの人は「教育と指導の違い」「指導スキル」というものを明確に持っていません。大事なのはこれらをきちんと明確に定義し、使い分けることです。
多くの場合、指導をしていると思っても「教育」になっていることがあります。教育が必要な選手や状況であればそれは良いのですが、指導が必要な時に教育をしていると、指導者の枠に選手を押し込めることになりがちです。選手の可能性を潰してしまうという事です。
指導をするために必要なのは、選手自身が自らの「志(理想の選手像)」を持っていること。そして、指導者が「指導者スキル」を身に付けていることです。そうして初めて「指導」ができます。
指導とは、選手の理想の未来に対してアドバイスをして、選手が主体となって進んでいけるように導くことです。そのためには「指導スキル」が大切になります。
そして、大切なのは指導者自身が整える方法を身に付けていることです。
指導現場は大変なことも多く、感情的になって選手を否定したくなることもあるかと思います。いつも大変な現場での指導、お疲れ様です。
そんな時、感情的になって選手を怒鳴って選手を委縮させてしまう(支配)か、その感情を自らの中で整え(禊ぎ)選手の成長を促す言葉がけに変えられるかどうかが「人間力」に関わります。
選手のミスやチーム内の問題を自分自身の課題だと受け取り、ヒトのせいにせず、自らの内側を整えることで解決策を提案していけるのが人間力の高い指導者です。
大和籠球では「人間力」を「人格・人望・人徳」という3つに定義しています。これらは明確に言葉として定義付けされており、それぞれの高め方も体系化しています。
〇礼(お辞儀のチカラ)
その在り方を整えるための方法として、まずは「礼」から入りました。
これは今までも大和籠球でまとめていたもので、僕が学生にこれまで毎回伝えてきているものです。日本は礼の国と世界から認識されています。バスケ選手も、学校でも、必ず礼をしますが、誰もその本当の意味ややり方を知りません。なぜならそれらを学ぶシステムが今までなかったからです。
礼については河村勇樹選手が試合に入る前に毎回やっていることで有名です。あの礼は「身体から心を整える」という意味があります。もちろん、そこには「感謝」「敬意」があって初めてそのパワーは発揮されます。
この礼をきちんと丁寧にやるだけで、自らが整う(心意体の統一)ので、結果的に相手が整います。相手を変えたいと思うのなら自分自身の内側を整える必要があります。
その技法が日本人が大切にしている「礼」なのです。ただし、一般的な礼では身体は逆に乱れ、弱くなります。これは体験した人しか分からないことですが、きちんと正しい礼(いわゆる「侍の礼」)をすると身体のエネルギー状態が変わります。
指導者の心を安定させるための方法として「礼」はとてもパワフルかつ実践的です。すぐに使えますが、きちんと正しい礼(頸椎を曲げず相手を視野の中に入れる礼)をする必要があります。そして、人生で活用するためには「継続」がキーです。
今回は、この礼を指導者の皆さんに体験してもらいました。これまでも学生たちに伝えることが多かったですが、あくまで「学生向け」で「バスケの技術に繋がるように」という伝え方が多く、指導者向けは初めてでした。でもやはり、これは本当に大切だと感じます。
振り返りの感想でもほとんどの参加者が「礼を大切にしようと思った」「自分を整えることがまず大切だと体感した」という感想を書いてくれました。
体験に優る学びはありません。
※大和籠球の勉強会「直接指導」でお伝えしています
〇選手は指導者の鏡「全我」
次に、自らを整えた後に重要なのは、目の前の問題(選手のミスやチームの問題)を自分の問題と受け取ることができるか?ということです。
「相手は自分の鏡」という言葉を聞いたことがある人が多いと思いますが、これは本当なのです。それを本や動画で(頭で)学ぶのではなく、”身体で学ぶこと”がとても大切です。
大和籠球では、この「相手は自分の鏡」という意識のことを「全我」と呼んでいます。
これは「自分は全てであり、全ては自分である」という武術の在り方(仏教でいう「空」や「悟り」の状態)であり、人と人がより良い関係で調和するために最も重要な意識だと僕は考えています。
この意識があれば、選手がミスした時、チームが乱れた時に、相手のせいにするのではなく、まず自分自身の内側にベクトルを向けることができます。
もちろん、依存の関係にならないために、選手自身の課題に取り組ませるためには「選手は選手、指導者は指導者」という分離の意識も時には必要ですし、チームの人数や環境によってはそうならざるを得ない状況もあると思います。
でも、この「全我」という意識があるかないかで「指導者」になれるか、その先の「和導者」になれるかが決まります。
選手のミスは自らの指導力不足が引き起こしている。チームが乱れているのは自分の言葉や在り方が伝播しているのかもしれない。・・・そう、本気で思えて初めて、選手やチームを導いていけるようになります。
これらの意識がないと、ミスを選手のせいにし、教育が強くなりすぎて選手の主体性を奪ってしまいます。そして、指導者の皆さんのストレスも増えてしまうでしょう。
僕は大和籠球を通して、現場の悩みを解決したいと思っています。指導者の皆さんの現場の悩みを少しでも減らして、ストレスを軽減して、指導を楽しめる環境を創りたいと思っています。
そのための「バックカット」であり、「礼」「志」「全我」です。今回は、これらのことを「体験ワーク」を通してお伝えしました。
参加者の感想では
「指導の概念が180°変わりました。自分は指導をしているつもりで教育になっていました」
「早く体育館で”指導”したくなってきました」
という声をいただき、確実に、このワークをすることで「指導者の在り方」が整っていることが僕も実感できました。
今回はこれらのことを「手のひらワーク」「観自在」「頸椎チェック」というワークを通してお伝えしました。
とてもとても大切な在り方、意識です。
〇基礎技術の指導法
今回は基礎技術として
・姿勢作り
・ドリブル
の指導法をお伝えしました。
僕が定義する基礎技術の一つは「ボールを簡単に失わない技術」です。
オフェンスを考える上で、まず身に付けるべきことはプレッシャーリリースです。シュート力も戦術もプレッシャーリリースができて初めて発揮できます。
そのために必要な「姿勢作り」「ドリブル」の基礎をお伝えしました。
これらも見ているだけでは分からず、実際に「実践」することでその大切さが腑に落ちるので、参加者の皆さんと共に練習しました。
姿勢作りでは「ピボット」が自然と出来るようになる練習ドリルを紹介しています。このドリルはとてもお勧めです。
このドリルをきちんとすることで、姿勢が良くなり、当たり慣れします。姿勢が良いとプレッシャーリリースも出来るようになります。
ピボットを指導することが難しいという指導者も多いかなと思うのですが、「対人でパートナーに物理的に押してもらうことでピボットを踏み、態勢を変える」という練習をしていると自然とピボットが踏めるようになります。
ドリブル指導においては「強くつくこと」「抜くための技術」が教えられることが多いですが、大切なのは目的です。その目的を踏まえた上での指導なら良いのですが、それ自体が目的になってしまうとズレてしまいます。
今回実践したドリブルの指導は「強く、でも柔らかく」という付き方です。これは実際にドライブの際も、キープの際も使える付き方で、ただ強いだけのドリブルでは視野が潰れて、当りも弱くなってしまいます。
また、ドリブル練習は一人で行うものと「対人」で行うものを使い分けることが大切だと考えています。対人で行う理由は、接触に慣れてプレッシャーリリースできるようにするためです。
このドリブル指導の際も、ピボットと同様に「対人」で行うことで接触に負けない態勢を保ちながらドリブルを創習慣が身に着きます。
〇シュートの指導法
プレッシャーリリースの次に大切なのは「シュート指導」です。
僕自身、シュートに関しては学生時代ずっと苦手意識があり、「誰よりもシュートに悩み、誰よりもシュートの練習をした」と(狭い範囲ですが)思うほど毎日のようにシュートが上手くなりたいと思っていましたが、一向に、苦手意識がなくならずにシュートに悩んだ経験があります。
今は「シュートは生き方が表れる」という考え方の元、自分自身の考え方が柔軟になったことでシュートも軽くなりました。今では苦手意識はありません。
今回は指導者の皆さんと共に、シュート指導の実践をしました。
「シュートはリングへのパス」という考え方を元に、ワンハンドプッシュパスからシュート動作に移行していきます。この流れは先輩であり配信仲間の武学籠球の慎さんが体系化されています。
シュート指導において「正確さ」も大切ですが、僕ら(慎さん)は「まず第一に『飛距離を伸ばす』」ということを指導しています。
なぜなら、細部に拘れば拘るほど「部分意識」が強くなり、シュートがバグる(試合でイップスのようになってしまう)という現象が起きるからです。また、細部にこだわりすぎるとスリーポイントを打つまでに時間がかかったり、スリーポイントに対するメンタルブロックが生まれ、シュート苦手意識がなくならないという現象が起きることがあるからです。
シュートに対するメンタルブロックをなくし、シュートの飛距離を伸ばすことを第一に考えたシュート指導を皆さんと実践。明らかに参加者の皆さんのシュートが軽くなり、シュート指導の方法を皆さんと共に深めることができました。
シュートは誰でも上手くなれます。
「シュートフォームは人それぞれ」であることは事実ですが、その「人それぞれ」を「指導」できますか?
一人ひとりの身体に合ったシュートフォームを”創る”ことを手助けすることが「指導」です。NBA選手のフォームや海外の理論をそのまま当てはめることは「教育」であり、それが合う子もいれば、合わずに苦しむ子もいます。
僕もある意味、最初は「教育」としてシュート指導の型を伝えているわけですが、最終的には「指導」をしていけるように、目の前の選手の「理想」に近づけるようなシュートを導いていける指導者を共に目指していきましょう。
その他にも様々な指導法や技術を実践しながらお伝えしました。
◯指導者スキル「PQS」
シュート指導でも、ディフェンス指導でも、メンタル指導でも、必要になるのは「身体に訊く(PQS)」という指導者スキルです。
多くの人は「あの人が言っているから正しい」「あの本で書かれていることが間違いないだろう」「NBA選手がやってるんだから…」という考えで、良し悪しを決めてしまいます。しかし、これはかなり高い確率で身体にエラーが生まれる(合わない、最悪の場合「イップス」になる)学び方で、指導者においてはこのような指導の仕方をすると(厳密には「教育」)、選手の可能性を狭めてしまいます。
大切なのは「選手自身の正解を”身体から”引き出す」ということ。この指導者スキルを「PQS(Physical Questioning System)」と呼びます。シュートもディフェンススタンスも、自分自身にかける言葉も、何が合っているかは”人それぞれ”です。なぜなら一人ひとり身体の構造も思考も違う人間だから。当たり前のことです。
その「人それぞれ」という曖昧なものを、超正確に見つけることができるのが「PQS」という技術です。これは実際、医療の世界などでも使われているもので(値段にしたら数百万円の価値があると医者の方が言っているくらいの技術です)、選手を導くためには”必須”と言えるような高度な方法です。
今回は、そのPQSの入り口となる部分をお伝えしました。動画や文字では本当のやり方は伝わらない(接触しないとわからない感覚を使うため)のですが、文字にすると「2人1組で身体の反応(筋反射)をとる」というもの。この時、押す側の人が「自分のエゴ(偏見や思考)を一切入れない」「質問の質」「押し方」がポイントです。ここがかなり繊細なので、ちょっとでもエゴが入ったり、押し方がズレると適切な答えを引き出せません。そのことを丁寧にお伝えしました。
指導者の方が言葉を伝える時のことをお伝えしました。これも指導者スキルです。
指導者の方は選手よりも様々なことを勉強している分、たくさんのことを伝えたくなると思います。僕もその気持ちがあります。でも、実は多くのことを言えば言うほど”伝わらない”という現実があるのです。これを頭ではなく、身体で学んでいただきました。
「いや、でもいくつものことを同時に意識することが練習の質の高さに繋がるんだ!」「うちは時間がないから1つひとつなんてやってる時間はない」「2つや3つを同時に意識しながら練習することで選手の技術力は伸びるんだ!」と思う方もいるかもしれません。確かに、コーディネーションドリルなどはそういう側面がありますし、それを否定はしません(僕は個人的に好きではないのでそういうドリルは指導してません)が、事実として、まず「人は一度に2つ以上のことを同時に考えると身体にエラーが起きる(経絡が切れる)」というのを体感しておくことが大切です。
指導者がこの体験ワークをすると何がいいのか?というと、指導者のストレスがまず減ります。「ヒトは一つずつ意識して取り組んでいった方が結果的に効率がいい」ということを知れば、選手に多くのことを教えなくなりますし、選手が2つ以上のことを意識できなくてもストレスを溜めずに済みます。「まぁ人間そうだよね」って思えるからです。自分自身も含め、選手も指導者も「ヒト」なので、こういった基本設定は一緒です。
「伝わる」と「伝える」は別物。この言葉は聞いたことがある人がほとんどだと思いますが、これをリアルな体験で学ぶか、本や人からの言葉で学ぶかはこれもまた全くの別物です。これも”体験に優る学びなし”です。
◯「得たい成果」「目的」の重要性
大和籠球では「目的」「得たい成果」を大切にしています。
なぜ、これらが大切なのか?それを、身体で体験してもらいました。以前のブログで「選手の主体性を引き出すための質問」として「得たい成果は何ですか?」というのを書きましたが、これ、本当に重要なのです。「得たい成果」を聞かずに指導から入ると、選手の主体性がない&目標がない=方向性がないまま進んでしまうので、どうしても「やらされた練習」になってしまいます。
でも、得たい成果を聞いて、選手から「今日はこれを達成したい」「この課題を克服したい」という意思を引き出した上で練習をしたら、選手の意思に沿った内容を指導者は提供できるので選手とのズレがなくなります。選手も自分で出した得たい成果(意思)なので、それを自分で得るために自然と身体が動きます。この時、「自分でやると決めたことはちゃんとやれる人になって欲しいと思っている」というような指導者の信念を選手に伝えてもいいと思います。
目的の重要性についても、以前、ブログで書いているのでそちらを参考にしてみてください。目的がない状態で目標だけを立てることがあるあるなのですが、これは問題を引き起こします。選手が燃え尽き症候群になったり、無気力になったり、指導者であれば指導がブレたり(良くない)勝利至上主義になります。
個人技術として、オフハンドの使い方も伝えました。
数年前から「オフハンドで相手の腕を払う」というのがスキルとして当たり前になってきていますが、僕ら大和籠球では武術武学の視点を活かしたオフハンドの使い方を勧めています。武術家は接触感覚(皮膚感覚)で相手の状態をスキャンして、パンチなどを一瞬でさばき、技をかけるのですが、「ヒトの接触感覚」を高める術を心得ています。その術をもとにオフハンドの使い方を考えると、「相手の腕を払う」という使い方だけではなく「相手を押さえる」という使い方もできるようになります。
相手を押さえる、というのはドライブでも使えるし、シールの際も使えます。オフハンドで相手の腕を払うことも、もちろん使える技術ですが(僕も使います)それをすることに意識が行き過ぎると、視野が狭くなることがあるし、本当にうまいディフェンスは”腕を払われても付いてくる”ので、その先の次元で勝負する必要があります。
そんなオフハンドの使い方、そして「呼吸」で接触がどのように変わるかについてもお伝えしました。呼吸についてはNBA選手のドライブの静止画像などを見ると、NBA選手もうまく(自然と)使っているんだなぁって思えます。呼吸法についても、武術武学の視点で「ヒトの身体」を研究し尽くした達人の叡智です。
◯シール(接触感覚を高める)
ボールを簡単に失わない技術を身につけるためには、シールの練習はとても大切です。
そのために3人1組で行う練習を紹介しています。これは以前もYoutubeで紹介したものなので、やり方は動画を見てもらえたらと思いますが、指導者自身が実際にやってみる、というのがやっぱり大事だなと思いました。実際にやってみると難しさがわかりますし、どのようにすればいいかが掴めてきます。
ここでも、細かい腕の使い方、身体の移動のさせ方、よくある失敗パターンなどをお伝えしました。
これも実践するから伝えられることが増えるので、できる限り、指導者の皆さんも選手と混ざって実践してみたり、今回のような指導者合宿に出て一緒に実践してみて欲しいなぁって思います。自分が実際にやることで選手への声がけが変わります。
「指導者自身も失敗する」というのは、選手の上に常に立ちたい支配的な人からしたら見せたくない姿だと思いますが、そういう人間味がある寄り添う姿勢を見せる指導者の方が今の子たちは信頼して付いていきたいと思う傾向もあると思います。大和籠球としてはそういう指導者(和導者)を増やしていきたいと考えています。
このシールの仕方は、ミスを減らすためにとても大切な基礎が詰まっています。片手で相手を抑えて、片手でボールに触れる。身体を縦にして幅をとって相手にボールを取らせない。リバウンドもミートにも活きますし、先ほど話した「オフハンドで相手を押さえる」にも使えます。
◯接触ありのディフェンスフットワーク
大和籠球でお勧めしているディフェンスフットワーク、対人で接触を使うものです。
足腰を鍛えるための基礎的なフットワーク練習も大切です。効率だけを求めるのではなく、やっぱり、勝つためには強くなるためにはキツイ練習をやるのも必要だと思っています。そのことを踏まえて、「無駄足をなくす」「相手のフェイクに過剰反応しない」という繊細なフットワークを身につけるドリルを実践しました。
一般的に、ディフェンスフットワークは「接触なし」から始める方が多いと思います。1、2、3っていう感じのスライドステップなど。僕もずっとそれをしていました。でも、それは足腰が鍛えられますが、同時に「過剰反応」が強くなってしまうというデメリットがあります。
なぜそうなってしまうのかというと、接触なしで行っているからです。実際の試合は、目の前の相手に対応する必要があるけど練習で「非接触」をしていると、必要以上に大きなステップを踏んでしまってフェイクに引っかかりやすくなったりしてしまいます。
接触ありで行うメリットは、「相手が動いた分だけ動く」という、相手に合わせた正確なフットワークが身につくことです。非接触だと自分と相手とのズレが見えにくいですが、接触ありで行うと、そのズレが正確にわかります。なぜなら物理的に触れているからです。
ここでは、練習ドリルの段階、前後左右のバランスの調整法(PQS)、接触ありと接触なしのディフェンス、後ろに下がる時になぜジャンプ動作を入れると良くないのかなどを実際にやりました。これも日本の一つの基準になって欲しいなぁと願っています。とても大切なことが詰まっています。
◯誘導ディフェンス(1on1)
続いて、1対1のディフェンス。
フットワークの基礎が身についたら、あとは対人で経験値を積んでいくことが大切です。フットワーク自体は土台作りであって、試合では相手がいるので相手に対応できなければいけません。
大和籠球では、ディフェンスにおいて「相手の能力を引き出さない」ということを大切にしています。これが「賢者は強者に優る」を実現するためのキーワードです。つまり、相手が「100」の力を持っていた時、その力を最大限発揮されたら不利になるので「80」とか「70」に押さえることを目指します。
ディフェンスの段階として、プレッシャーをかけられることも大切なのでそれ自体は否定していませんが、ただ闇雲にプレッシャーをかけるだけど、相手の能力を引き出してしまいます。要するに、「100」ある力を「100」もしくは「110」とかにしてしまうということです。これは自分たちの在り方、戦い方で変わる部分です。
ディフェンスには「対応」と「誘導」があります。「対応」は相手が主体、「誘導」は自分が主体です。誘導ディフェンスでは、自分たちの終着点(どういうシュートを打たせるか、どこにドライブをさせるか、何を引き出すか、何を優先的に守るか)を決めます。その目的目標設定があって初めて「誘導」ができるようになります。
誘導の概念があると、下手にプレッシャーをかけてギャンブルをして抜かれることも減るし、相手のドライブなど得意を引き出さないので、より優位に守れるようになります。もちろん、これをしたら絶対に守れるという話ではなく、リバウンドも大事だし、フィジカルで押され負けないこと、気持ちで負けないことも前提として大切です。
この1対1のディフェンスを身につけるための指導段階、練習ドリル、ジャブステップの守り方、スティールの狙い方などをお伝えしました。僕はバックカット大好き人間ですが、実はディフェンスも大好きです。面白いですよ、この大和籠球のバスケは。
ぜひ指導者の皆さんにも体験して欲しいし、学生の子達には「少しの知識で世界が変わる」ということを、バスケを通して体験してほしいなと願っています。もっとこれを僕も広めていかなくてはです。広めていきます。
・・・そんな盛りだくさんな内容で、1日目は終了。
合計6時間半、みなさんと一緒に楽しく実践しました。
(懇親会は、参加者の方が指導されているチームの試合映像を見ながら直接アドバイスをしたり、大和籠球について共に語った素晴らしい時間でした)
2日目は参加者が増え、「チーム戦術」を実践しました。
〇1日目の復習
初めての参加者の皆さんには、大和籠球を学び実践&活用していく上で最も重要なことをシェアしました。
・大和とは?
・礼(自らを整える)
・指導と教育の違い
・和導
・全我ワーク
・大和三軸
これらがあって初めて「指導」ができる、大和籠球を伝えられるということを参加者の皆さんには「体感ワーク」でお伝えしました。
※この体験ワークは「ムスビ」を創るためにあります。ムスビとは「縁結び」の「ムスビ」で、人と人が調和して繋がる状態。チームで実践すると選手同士のアイスブレイクになるし、今回のように初めましての方が集まる場で行うと一気に仲良くなれます。
〇プリンストンとは?
2日目のテーマは「チーム戦術」でした。
多くの参加者の得たい成果が「プリンストンの指導法を学ぶ」「バックカットやダブルパンチを導入したい」ということでしたので、それに合わせて、まずは「プリンストンとは?」という話をしました。
指導法、練習ドリルの前に、まずこのことを指導者の方が理解するのが最も重要です。なぜなら「Princeton Offenseをしよう」と思うと上手くいかないからです。
Princeton Offenseとは、プリンストン大学が創ったオフェンスのこと。僕らはプリンストン大学と違うチームですし、選手の質も、環境も時代も違います。なので、Princeton Offenseをしようとすると出来ないのです。選手に合ってないから。
Princeton Offenseの形の前に、Princeton Offenseが生まれた「背景」を知らなくてはいけません。
ここでは「Princeton Offenseがどのようにして創られたのか?」をPete Carrilさんの言葉から紐解きました。
ポイントを3つに絞ってお伝えしました。
・選手とチームの強みを活かすこと
・目の前のディフェンスを見て判断すること
・相手のあらゆる守り方に対応する策を準備しておくこと
それらをプレーに落とし込んだ結果生まれたのがPrinceton Offenseです。
僕らはプリンストンをしようとしても「プリンストン風オフェンス」ができるだけで、Princeton Offenseにはなりません。でも、このPete Carrilさんの哲学を正しく理解し、目の前の選手の強みを活かし、目の前のディフェンスを見て判断できるような準備を積み重ねれば、「Princeton Offenseのような〇〇〇オフェンス」ができます。
この「〇〇〇」に当てはまる言葉は、指導者の皆さんと選手で作られるものです。例えばこれが「駆け引き」かもしれないし、「強者に優る」かもしれないし、「連続性がある」かもしれません。
そして、一番最初に伝えている「志」と通じることですが、大事なのは目的です。
Princeton Offenseを学ぶ目的は何か?Princeton Offenseをチームに取り入れる目的は何か?バックカットやPrinceton Offenseを通してどのようなバスケットボールを創りたいのか?
何度も言いますが、大事なのはここです。指導者の指導する目的、理念。その下にあるのが「Princeton Offenseを取り入れる目的」です。
手段であるはずの「ツール」が「目的」になってしまうことが、スポーツ現場ではよくあるし、人生でもあります。「Princeton Offenseを学ぶこと」「Princeton Offenseをすること」が目的にならないように。
Princeton Offenseという素晴らしい”ツール”を使って、どのような理念を実現したのか?どのような目標を達成したいのか?選手にどんな風に成長してほしいのか?チームでどんなバスケットボールをしたのか?そこを明確に持つことで初めて「プリンストン」がスタートします。
今回はそんな今まで話していなかった「指導者目線」のポイントをまとめてお伝えしました。やり方、練習ドリルは今までもYoutubeでたくさん配信してきました。でも、それらをいくら学んでも、目的が曖昧だとズレてしまいます。
また、バックカット指導ではミスは付き物です。そのミスに対する指導者のマインドセット、声掛け、場作りが最も重要です。支配的な場ではバックカットはチャレンジできないので、選手に迷いが生まれ、チームにバックカットを取り入れることは難しいです。
だからこそ、最初に話した「指導者スキル」「整える」ということが必要になります。僕自身、今までこういったことを発信していなかったことで現場の指導者の皆さんを困らせてしまっていたと感じるので、その問題を自らの課題と認識して、解決策を提案させていただきました。
どれも超大事なことです。
〇プリンストンの実践
続いて、皆さんとともにプリンストンを実践。
プリンストンは「外から見ている」のと「実際にやってみる」というのは、全く見える世界が違います。外から見ていたら「パスが入らない」と思える場面でも、意外とパスが入ったりする。外から「今のはそうじゃない」と思える選手の判断も、実際にプレーしてみるとその選手にしか見えないコースがあってバックカットが的確な判断だったりするのです。本当に。
この認識のズレを埋めるためには「実際にやってみる」というのが一番です。
そんなわけで、今回は指導者の皆さんと共に「プリンストンってこういう感じ」というのを、直前に解説したプリンストンの概要を踏まえて実践しました。
プリンストンで大事なのは「前の前のディフェンスが答えを持っている」という判断基準の元、一つひとつのプレーで駆け引きをしていくこと。そして、一つのアクションでチャンスが作れなかったら、すぐに次のプレーを「繋ぐ」という意識です。
この「一人ひとりの駆け引き」と「チームでの繋ぎ」があるから「連続性」が生まれ、あの目まぐるしくスクリーンプレーとバックカットが行われる元祖プリンストン大学のPrinceton Offenseが生まれるわけです。
「え、それなら自分のチームのオフェンスもプリンストンって言えるんじゃない?」と思う方がいるかもしれませんが、もしそういうオフェンスになっているのならそれは「プリンストン(風なオフェンス)」と言えると僕は思います。
一人ひとりが駆け引きをして、一つのアクションがダメならすぐ次のアクションに繋げる。これが「プリンストン」です。
でも、ここで大事なのが「一人ひとりの駆け引き」というのが「本当にニュートラルな駆け引きができているか?」ということです。多くの場合、「バックカット」という選択肢がない、もしくは、きちんと練習した経験がないために「ニュートラルな駆け引きが出来ていない」という現象が起きています。
プリンストンをプリンストンにしている要素の一つは、代名詞と言える「バックカット」です。
バックカットとは何かというと
・駆け引きをニュートラルにするための選択肢
・プレーを止めないためのツール
です。
バックカットがないバスケ、ちゃんと指導されていないバスケは、駆け引きをしているようで「表:裏」の選択肢の割合が「1:9」になっていたりします。つまり、ニュートラルに駆け引きできておらず、「ボールを貰えないからしぶしぶ裏にカットする」というプレーになりがちです。
僕はこの状態を「ジャンケンで、一つの選択肢が制限されている状態」と言っています。面白くないし、勝てる確率も減りますよね。ニュートラルな駆け引き(対等な勝負)になっていません。
このようなカットがディフェンスの裏を取るカットだったとしても僕は「バックカット」とは呼んでいません。「惰性のカット」と呼んでいます。本気でパスを受ける気持ちがない、目の前のディフェンスを崩していない、パサーとタイミングを合わせようとしていない、パサーがパスを出せない状況といったカットです。
この「惰性のカット」だと「プリンストン」にはなりません。僕(大和籠球)の中では、そう定義したいと思います。
プリンストンを武器にするためには「本気のカット」を身に付ける必要があります。本気のカットとは、全力でリングにカットする、目の前のディフェンスを崩す(1on0を作る)、パスを受けられるタイミングでカットする、味方とアイコンタクトをとってカットする、というものです。
これがあって初めて「ダブルパンチ」が生まれます。ダブルパンチとは、バックカットと同時にもう一つの攻め所を準備するプレーです。バックカットで生まれた「1on0」によって相手ディフェンスを引き付けて「1on2」を生み、アウトサイドでのフリーやズレを創る。
これを連続的に起こしていくことで、ディフェンスを混乱させ、ディフェンスにストレスを与えていくのがプリンストン大学の戦い方でした。そのためには、「本気のカット」が必要。
そんな前提で、ダブルパンチを起こしながらプレーを繋げていくパターンを、Pete Carrilさんの哲学(「目の前のディフェンスが答えを持っている」「あらゆる守り方に対応する策を準備しておく」)を元に実践しながら創っていきました。
参加者からの「もしここが止められたらどうしたらいいんですか?」という質問に対しては「そこは指導者の皆さんの『準備するパーツ』によって変わります」という回答をしました。
「ここを止められたら、次は〇〇〇に繋げる」というところを考えるのが、オフェンス構築で面白いところであり、プリンストンの発想です。オフェンスは既にあるものを取り入れるにしても、あくまで”参考”にするものであって、それが答えかどうかは目の前の選手の個性と指導者の理念によって変わります。
指導者がどのような選択肢をGoodと思って準備しておくか、そのパーツを”創る”というのが大和籠球で伝えたいオフェンスの創り方です。既にある答えを模倣するのではなく、指導者の皆さんと選手で創り上げていくことが面白いのです。
より具体的には、プリンストンをする上でまず取り組むべきことは「Rim run」です。リングに向かって走ること。つまり、ハーフコートオフェンスに入る前段階として、まず「走る」という意識が大切だという事です。
Princeton Offenseというものは、ハーフコートオフェンスを指します。なので、本来はハーフコートのオフェンス練習をするのですが、”現場”は机上の空論では上手くいきません。それをこの2年間、大和籠球の同志のチームに関わり、よく分かりました。
ハーフコートオフェンスをしようとすると、相手のプレッシャーをいなせなかったり、縦の流れがなくなってバスケットボールとして不自然なエントリーからオフェンスをスタートさせてしまうことがあります。なので、基本的にはまず走って、リングを狙う。
その後、パスを受けれなかったらローポストでパスを受けてダブルパンチに繋げていく、という流れをお勧めしています。
Princeton Offenseは基本的に「ハイエントリー(Chin)」「ローエントリー」「ピンチポストエントリー(Point)」がありますが、まずはローエントリーをやることがお勧めです。
ローエントリーからはダブルパンチに移行していきます。なぜダブルパンチを先に伝えるかというと、ボールを下に落とす(Playmaker spotを使う)+3人での崩しが試合中にプレーを起こしやすく、かつ、得点に繋がりやすいからです。
その後の流れについては、皆さんと実践しながらプリンストンのような繋がりのあるオフェンスを構築する指導法をお伝えしました。
Chinのハイポストエントリーもとてもお勧めなものですが、参加者の皆さんのチーム事情を考えて今回はそこまで詳しく流行りませんでした。テーマを分けて、次回は「Chin」を中心とした勉強会を開催しても面白いなと思っています。
〇全体像を先に話す
今回、指導者合宿ではいくつか「指導者スキル」をお伝えしました。
これらは本来、「指導者」になる前に学ぶべきことなのですが、今の仕組み上、まだこういったスキルを具体化されていないので知らずに指導者という立場になっている人が多いのではないかと思います。これは教員の皆さんにも言えることではないでしょうか(僕は教育学部を出ているのですが、「指導者スキル」「教育と指導の違い」「礼と志」など一切学ばずに教員免許が取れてしまいました)。
今回の指導者合宿では、指導者スキルとして「FT4」「FN5」「4つのスキル」「ファーストチェス法則」「1度に2つ以上のことを意識させない」をお伝えしました。これらもとても重要ですが、このプリンストン指導の際は「全体像を先に話す」ということをしています。話すだけではなく、「こんな感じ」というのを先に体験してもらいました。これもとても大切です。
細部にこだわることも大切ですが、「ゲシュタルト」という全体像を先に”感覚的に”体験してもらうことが理解を早めます。部分の理解も全体があって初めて「これはこういう場面に使えるんだ」というのが腑に落ちます。
〇2人での崩し「Dribble at」
続いて、プリンストンの真髄ともいえる「バックカット」の基礎について実践しました。
Dribble atとは、ドリブルでディフェンスに向かう事。「DHO」というドリブルハンドオフと同じような動きですが、バックカットを表として、センターだけではなくガードも行うプレーとして「Dribble at」という名前で指導しています。
Dribble atは2人で出来るプレーなので、ダブルパンチが上手くいかない、1対1が上手くいかない時にこのプレーでチャンスを創っていきます。この時、「バックカットを表にする」というのがポイントです。
バックカットを表にすることで、先ほども言ったように「駆け引きがニュートラルになる」というメリットがあります。多くの選手はDHOに対して「ボールに向かってくる」という選択肢しかなく、ボールに向かった後にパスを受けられないorディナイが厳しいからバックカットをするのですが、そうなると”後手”に回ってしまいます。しかも、パスのタイミングが合わず、ボールマンがダブルチームを受けてしまう形がよくあります。
なので、ニュートラルな駆け引きを身に付けるためにも、プレッシャーリリースをするためにも、まずはDribble at→バックカットを身に付けるといいです。バックカットが表の選択肢になって、ようやく「ちょうどいい駆け引き」になります。
このDribble atはプレーとしてはシンプルなのですが、身に付けるのには時間がかかりますし、コツがあります。まずはパスを出せるようにタイミングを合わせ、その次にディフェンスを見て判断できるようにする必要があります。
そのための練習ドリル、練習ドリルの段階、声掛けのコツをお伝えしました。
これは既にYoutubeで公開している「バックカット最強ドリル(※学生が創ったドリル)」というのが元ですが、最新の指導法を踏まえてアップデートしたものをお伝えしました。
Dribble atのパスのコツ、カットのタイミング、守られ方、パスが入らない時のプレー、これらを行うと「バックカット」だけでもいくつもチャンスがあることが分かります。その後、「ウィングでパスを受ける」という選択肢を追加して1対1を行います。
この1対1の目的は、バックカットの習慣を身に付けること、バックカットの技術(カット+パス)を身に付けること、パサーと目を合わせて何をしたいかがお互いにわかるようにすることです。
5対5と1対1はスペーシングも違うので、全く同じパスが入るかと言われれば必ずしもYesとは言えませんが、でも、この練習で「本気のカット」を身に付ければ、必ず5対5にも活きるようになります。
目の前のディフェンスを崩せるようになって初めて「プリンストン」になるし、「ダブルパンチ」が生まれ、「連続性」が生まれます。それが効率的な得点に繋がっていきます。
この練習も参加者の皆さんと共に実践したことで、新たな指導法やコツを見出すことができました。僕自身もまだまだ実践しながら、より良い大和籠球を創っている最中です。同志の皆さんに感謝。
〇ダブルパンチの実践
その後は、ダブルパンチの実践(3対3)を行いました。
指導者の皆さんも実際にプレーすることでダブルパンチの面白さや価値に気付けていた様子で、「指導者自身が実際にプレーしてみる」という経験はとても大切だと僕も思いました。
指導者がプレーする環境というのはなかなかないし、その時間も取れないと思います。でも、実際にプレーするのと外で見ているのとでは見える世界はやっぱり違うので、実際にプレーして選手の気持ちを体験することは「指導者」になるためにはとても大切な視点だと思います。
あとは「見本を見せられる」というのも、圧倒的な説得力になります。できる限り、身体を動かせる状態で維持して、年齢的な衰えはあるにしても見本をいつまでも見せられる指導者でありたいですね。
指導者自身が実際にプレーすると「ミス」というのも必ず起きることがよく分かるはずです。ミスも選手を見ているだけだと「今のは~したらよかっただろ」と思えるものですが、実際に自分でもプレーするとその難しさを実感できます。この事がとても大切だと思います。
指導者も指導の際に「ミスができない」という心理状態や選手との関係性になってしまったら、自らの過ちに気付けなくなります。僕は選手との関係性においては「もし自分が間違っていたところがあれば、素直に選手に謝れる関係性」というのが大事だと思っています。
これができない、というのは指導者も苦しくなるし、選手を支配してしまう構造になりやすいです。
もちろん、カリスマ性やリーダーシップで教育していくこと、指導していく在り方も必要ではあるし、それが合っている人もいると思いますが、自らの過ちに気付ける在り方、それを選手に素直に謝れる素直さや謙虚さはヒトとして持ち続けたいですね。
3対3を実践する中で色々とコツをお伝えしながら、ダブルパンチを指導する手順、スクリーンやカットのタイミングなどをお伝えしました。ダブルパンチは一生楽しめる駆け引きの集合体です。
〇ボール運び
自分たちよりも強いチームと対戦する際、間違いなく必要になるのは「安全なボール運び」です。
どのレベル、どのカテゴリーだとしても、ここを乗り越えないと先がないと言えるくらい大切です。優秀なPGを育てることも大切ですし、パスで運べるのも大切。運ぶためのドリブルを練習するのも個人として必要な努力だと思います。
それらを踏まえ、ここでは「大和籠球」としてお勧めするボール運びの方法をお伝えしました。
まずは新田高校から学んだ「切り替えの早さ」を意識して、シュートを入れられた後にすぐボールを出して縦パスを繋ぐという練習。これを新田高校の場合は「パスの優先順位」「ノードリ」という指導で身に付けるようにしています。
それも素晴らしい実践でそれを継続していけば、それだけでも速攻が出るようになったりするのは、大和籠球の同志が実証済みです。ただ、今回の指導者合宿の参加者とノードリを実践するのは身体的に難しかったこともあり、別の方法論をここではお伝えしました。
・シュートを入れられた後の縦パスを繋ぐ練習ドリル
・5メン(5人での速攻)
・Shadow
・Princeton
・Serbia
切り替えを早くすること、縦パスを繋ぐこと、ボール出しの選手を壁に使って運ぶ方法、1対1で運ぶときの意識の使い方、プリンストン大学のボール出し、セルビア代表がやっていたout of boundsで使えるセットプレーをすべて実践。
ボール運びが上手くできずに負けてしまうのは悔しいし、バスケットボールのレベルを上げるためにもここを乗り越えられるチームをもっと増やしたいと思って、僕もここ2年間、大和籠球で関わる指導者のチームでこれらのボール運びを指導して研究してきました。
そもそも論として「ガードがガードとしての責任をもって、ドリブルの練習をする」「気持ちで負けないPGを育てる」というのも大事です。それと、チームで助けながら運ぶのは両方大切ですね。
ボール運びで重要な「意識」や「目線」のワークも行いました。
〇RONDOの実践
最後に、RONDOを実践しました。
これも「実践」にやっぱり価値があるなぁと感じました。指導者の皆さんと楽しく、RONDOをやりながらパスの出し方やピボットの使い方、練習ドリルの工夫などをお伝えしました。
RONDOについては、これまでも何度も動画を出していますし、僕自身もプレー経験が何度もあり、やるたびに「やっぱりこれは大事だ」って思います。
RONDOと鳥かごは別物です。
RONDOというのは、サッカーでプロ選手も行っている練習で、駆け引き、間の取り方、ミート、リードパス、目線、タイミングなど本当に様々な技術が身に着きます。
そして、これらの技術は「対人駆け引き」でしか身に付かないことですし、RONDOの「狭さ」に秘訣があります。狭い中でプレーするからこそ、プレッシャーを受けた状態でも冷静にプレーできる落ち着きが身に付くようになります。狭いからこそ、正確なパス、ディフェンスをズラす意識、ミート、ピボットなどの制度が自然と高まります。それらをきちんとやらないとミスになります。
ドリブルありのRONDOなど、様々なドリルを実践。
RONDOはパスや間の技術を身につけるものですが、その中にドリブルを導入する目的は何か?なども実践しながらお伝えしました。これもまたとても重要かつ楽しいドリルです。
上手い人は狭いスペースでもチャンスを作ることができます。狭いスペースでも冷静にプレーできます。それを「RONDO」という仕組みの中で身に付けさせたいという狙いがあるのです。「狭さ」がポイントです。
RONDOを上手くするコツは、ピボット、ミート、全体を見る、身体と目線で駆け引きをするなどです。これらのコツを伝えて、あとは継続的に実践することが大切です。1日や2日で身になるものではありません。
そして、もう一つ、RONDOをする時のメンタリティ。
遊びの要素はある(真面目にミスを恐れてやるものではない)ものの、軽い気持ちで同じミスを繰り返していると成長しません。この練習ドリルはサッカーのプロ選手がやっているくらい、とても重要な要素が詰まっていますが、そういった技術が身に付くかどうかは「取り組み方次第」です。
楽しみながらも、でも真剣に。この狭さの中でミスをしないような選手になれると、バスケは本当に上手くなります。これは僕自身、プレーして感じていることなので事実としてもっと伝えたいと思っています。
最後、RONDOの3対3をやったのですが、これがとても良かった。やっぱり、RONDOは最後はシュートありでやるといいです。ペイント内の2対2、3対3,これがめちゃくちゃいい練習です。
スクリーンプレーをスイッチされた時、ハンドオフでディフェンスがきつい時、狭いスペースでPick&Rollする時、そういった時の「間の技術」というのが身に着きます。
一瞬のチャンスを逃さずにカットする感性、そこのピンポイントでパスを出す技術、目の前のディフェンスとの駆け引き、これらが狭い中で2対2や3対3をすると身に付くのです。こういった技術はダミーディフェンス付きで教えるのは難しいですし、5対5の中でも沢山こういう場面があるのですが「今!」と外から指導者が指示を出しても間に合わないことが多いです。選手が、目の前のチャンスに気付き、選手自身で判断してプレーしていく必要があるから。
こういった「教えたいけど教えにくい『間の技術』」が身に付く”仕組み”がRONDOです。
僕自身、このRONDOを実践して、見本を見せることでRONDOの価値と楽しさを伝えられる指導者であり続けたいなと思います。
同志と共に汗をかき、楽しみながら実践は終了。
締めは振り返りのシェア。
参加者の皆さんが感じた「気づきが得られたこと」「今後活用できそうなこと」「もっと知りたい事」「成長点・成果点」「課題点」「感想」のすべてが大和籠球の答えです。
大和籠球とは、何かの型が決まっていて教えがあるわけではありません。
指導者一人ひとりが自らのバスケ人生を振り返り、志(指導の目的)を立て、全我の意識で選手のミスやチームの問題を自らが解決すべき課題と捉え、礼や呼吸法で自らを整える。そして、目の前の選手の個性や強みを活かして、チームが和するバスケットボールを創っていく。
一番最後、参加者の皆さんに
「もし大和籠球を人に伝えるとしたら、どのようなバスケットボールだと伝えますか?」
という質問をしました。
この答えは人それぞれ違っていいし、違ってほしいという願いが僕の中にあります。
もし全員が同じものであれば、それは教えがある型にはめる教育的なバスケットボールになってしまうからです。僕が答えではなく、大和籠球は「大和なバスケットボール」を創るためのツールです。
参加者の皆さんが感じた感想、大和籠球を最後にお伝えします。
===参加者の振り返り===
〇氣付きが得られたところ
・礼(姿勢)を整えることの重要性
・DFが答えを教えてくれる、ということ
・1つの動きがダメだったときに次を用意すること
・成貢した人を褒める
・同志と学ぶ楽しさ
・そもそも視野を広げないと厳しい
・Chin+ダブルパンチのエントリー
・運び方(Shadow・Serbia)
・頸椎の角度で身体のエネルギーが変わること
・目の前の子どもに対して考えていることは伝わっている
・FT4の②Speedはエナジーを伝導するために重要。大事なことはゆっくり小さく話す
・人間が本来持っている見えない力があることに気付かされた
・切り替えの速さから攻めを生む
・プレーとプレーのつなぎ方
・結局、人と人がつながっていないとプレーは継続できない
・コーチ自らがまずゼロ(フラット)の状態を整える
・指導者自身が整うという体験
・今まで自分が行っていたものは指導ではなく教育になっていたと思う
・整えることが本当に大切
〇今後活用できそうなところ
・各種ドリルについて
・原田さんの声掛けの仕方
・ダブルパンチ
・ロンドを使った駆け引き
・Chin+ダブルパンチ
・パスワーク(縦パス)
・自チームでの運び
・プリンストンOFは場作り、成貢
・あらゆるDFに対応できること
・ロンド
・エントリーからの攻めのパターンのバリエーションが得られたこと
・早いテンポを作っていく
・しばらくロンドをやっていなかったのですが、その大切さを再認識しました。次の練習から取り組んでいきたいと思います。
・見えるもの(身体やモノ)から整える
・礼のワーク
・自分を見つめ直す(全我)、礼、呼吸法、目的意識
〇もっと知りたいこと
・学生を教えていると1~2年という短いスパンで選手が入れ替わるので、全て教えきれない。取捨選択の優先度など参考にしたい
・パス(強く)
・コンタクト、シール
・新田バスケ、バックコートでの判断
・シュートの教え方、伝え方
・ダブルパンチの動き
・1on1のディフェンス、2線・3線の守り方
・新田高校のようなパスバスケに繋がる練習
・DFのスペースの潰し方、人とボールの位置関係
・学びを継続するための仕組み
・礼のバスケットボールへの活用
・無意識状態(力を抜く、考えない)
〇成長点・成果点
プリンストンの運び~エントリー~アタックの具体パターンのイメージはついた
・プリンストンの考え方を知ることができたこと
・バックカットの取り組み方や成功させるためのポイントを知れたこと
・周りとの対話
・礼、結び、声掛けの仕方
・運び方を知れたこと
・ボール運び
・プリンストンのパターンを教えてもらったこと
・Chinなどで一つのフローを起こした後のつなぎ方、ダブルパンチ
・プレーとプレーの繋がりが見えるようになってきたこと
・まずは自分自身がゼロになること
・指導者としての目的を思い出せたこと
・全我を知れたこと、礼
〇課題点
・学生へ落とし込む時の自分の理解力不足
・自チームのレベルに合わせて取り入れる時の工夫を用意したい
・落ち着いて判断できない
・形にとらわれすぎる
・自分の心を整えて教えること
・ダブルパンチの理解、動きを理解する
・自チームに落とし込むにどこから取り組んでいけば良いのか
・二手目、三手目の用意
・継続していく
〇感想
・1日という短い時間でしたが、大変学びの多い1日でした。引き続き、よろしくお願い致します。発信活動も大変かと思いますが、頑張ってください!
・心が相手に伝わることを体験でき、今後に活かそうと思いました。とても楽しかったです。ありがとうございました。
・まだまだ奥が深い学びが多そうです。礼の大切さを感じました。
・引いて守られたり運びを潰されたりする場合の考え方を得られた
・二手目、三手目のつなぎのつくり方を得られた
・学ぶことが多いと思いました
・整ってきました!
・問題点から出すことで自分の目的ややりたいことに気付ける
・指導者の姿勢の体験ワーク〇
・教育ー指導ー和導
・早くバスケがしたい、教えたいと素直に思いました。生徒が考えていることを、もっと傾聴し、取り入れていきたいと思いました。
〇大和籠球とは?
・相手の思考を考えるバスケットボール
・型にハマらず選手とコーチで創り上げるバスケットボール
・バスケを通して仲間を作るバスケットボール(対話・人柄・チームワーク)
・志を持って、互いを成長させるバスケットボール
・創造的&知的、Fun Creative Basketball
・本質が詰まったバスケットボール
・人間が本来持っている見えない力を発揮できるバスケットボール
・協同してたくさんのフローを起こし続けるバスケットボール
・人と人の繋がりをつくることができるバスケットボール
・選手と指導者が結びつくための仕組み
※今回の映像はオンライン販売するか検討中です
素晴らしい出会いと時間でした。
参加してくれた皆さん、ありがとうございます。
今後とも大和籠球の同志として、共に整え、共に進化していきましょう!
指導者合宿は今後も定期的に開催予定です。
ぜひご都合いいタイミングでお越しくださいませ!
PS.
現在は、オンラインコミュニティと直接指導の活動を行っています。
直接指導(チーム向け)の依頼は、こちらから
大和籠球 勉強会(直接指導)