キャリルさんが亡くなってしまった…
僕のバスケ人生を変えてくれた方、
プリンストン大学で30年間コーチをし、
Princeton Offenseを通して全世界に影響を与えている偉大なコーチ。
終戦記念日の次の日、8月16日の朝に92歳でこの世を去りました。
このニュースを聞いたときは言葉がありませんでした。
実は去年の9月から、僕はキャリルさんに会いに行くことをプロコーチの方と計画していました。
Princeton Offenseを深めて発信していく上で、キャリルさんの考え方をきちんと受け取っていくことが必要だと感じていたからです。
インタビューをさせていただいたり、僕が深めていたプリンストンについてのことを見ていただけるように準備をしていたところでした。
なので、僕はここ最近、
キャリルさんのインタビュー動画を聞き、
「ああ、会いたいなぁ」
「こんなこと質問したいなぁ」
という考えを巡らせていました。
レジェンドに対して生意気な表現ですが、
なんだかとても親近感を感じていた自分がいたんです。
だから、訃報を聞いた時、とてもショックでした。
92歳なのでとても長生きですし、
多くの人に影響を与えた人生を考えれば、
「素晴らしい人生、お疲れ様でした。ゆっくりお休みください」
という温かい氣持ちで言葉をかけてもいいニュースかもしれません、普通であれば。
でも、僕にとってはそうじゃなかったです。
本当に言葉がありませんでした…。
「会いたい人には会える時に会いに行かないといけない」
そう思いました。
自分の行動力が足りなかったことで、キャリルさんが生きているうちに会えませんでした。
すっぽりと心の穴が開いてしまったような感覚で、
そのニュースを聞いてから数時間は抜け殻状態でした。
でも、僕がやることは変わりません。
僕はキャリルさんの意志を引き継ぎ、
Princeton Offenseを深め、発信し続けます。
死ぬまで。
そう、前から決めていましたが、
よりその意志が強くなりました。
僕の志は
「全ての人を病から解放し、自分らしく自然体で生きれる場と仕組みを創造すること」
です。
Princeton Offenseは、まさに、僕の志を成就するために最適のツールの一つです。
僕はPrinceton Offenseと出会ったことで、バスケ人生が変わりました。
そして、人生の豊かになりました。
僕の周りには、キャリルさんの信念「賢者は強者に優る」に共感し、
そこに向かって一緒に歩んでいこうとする素敵な同志がたくさんいます。
僕だけではなく、
これまで関わった選手たちも、
コミュニティに参加している指導者たちも、
多くの人がプリンストンでバスケ人生を変えています。
プリンストンに取り組むことで、自分らしさを取り戻せた人。
今まではロボットのようにプレーしていたけど、プリンストンを通して主体的にプレーを選べるようになった選手。
今までは選手のプレーに対してイライラしたり怒鳴っていたけど、プリンストンを通して選手とと共にチームを創る喜びを感じられるようになった指導者。
プリンストンを通して自身の固定概念が外れ、バスケットボールだけではなく、日常生活の中でもニュートラルに物事・人を見れるようになったという方。
ここでは紹介しきれないくらい多くの方がプリンストンを通して変わっています。
どうしてPrinceton Offenseを採用すると、
バスケの上達だけではなく、人間性も育まれるのか。
なぜこれだけ多くの人の人生が変わっているのか。
これはキャリルさんが
・バスケットボールと人を分離させていなかったから
だと僕は思います。
キャリルさんは、こう言っています。
・「唯一の差異」p3
(引用:ピート・キャリル(2011)『賢者は強者に勝る』p.3)
バスケットボールを教えるときには、技術的な部分と生き方に対する部分の両方を教えなければならない。なぜなら、バスケットボールは人間によってプレーされるからだ。どのくらい多くの人々がそのことを忘れているかという事実にあなたは驚くであろう。疲れるのも、挑戦をあきらめるのも、ガールフレンドや父親またはコーチに対して怒るのも全て人間である。そして、常時、勝つためには何をすべきかを考えることができないのもまた人間である。そして、常時勝つためには何をすべきかを考えることができないのもまた人間である。あなたは黒板に×と〇を記入し、それをいどうしたり、予測を立てたりすることは簡単なことである。しかし、実際に人間がその状況でプレーすれば、黒板上で得た予測は当てにならない物となるであろう。このような事実は、全てのスポーツへの考え方の本質を変えるものである。・・・認識すべきことは、人間の方程式を計算に入れずには、コーチングは、できないということである。
コーチングを行う際に、人間としての強さを教えずにはいられない。例えば、あなたの選手がチームメイトにフリーショットを打たせるためにスクリーンをセットし、相手のディフェンダーがその選手に向かってフルスピードで走りよって来る場合、彼にはディフェンスに衝突し、危険な状況を受け入れる責任がある。しかし、その選手には、スクリーンをセットして衝突させるだけの勇気があるだろうか?そこが、生き方の部分である。ニューヨーク・ニックスのパトリック・ユーイング(Patrick Ewing)はどのくらい稼いでいるだろうか?年棒にして5~6億円は稼いでいるであろう。彼は、彼の選手生命を賭けて、走りながら向かってくる相手選手の前に踏み込んで相手に衝突させる。一方、彼と年棒が同額の選手でもそうはしない選手は存在する。人間としての強さを持たない選手は、衝突直前に身をかわすのである。なぜ、疲れた状態になるとギブアップする選手とそうでない選手が存在するのであろうか?この事実こそが、私の意味する人間としての強さを示すものである。私は、あなたがそれを選手に教えることができるかどうかは、確信がないが、強調すべきであることは確かである。人間としての強さの部分を強調することにより、誰がその能力を備えているかを見出すことができるのである。その能力を持っていないように見える選手が実は能力を備えていたりすることがよく起きる。あなたはチームに入部するまでは、そのような潜在能力を表に出す必要がまったくない環境で育ってきた選手も存在するのである。あなたは、選手が変化できるようにサポートしてやらなければならない。行動を変えることこそが教育である。
キャリルさんは、バスケットボールを指導する際、
目の前の選手たちが「一人の人間である」ということを忘れていませんでした。
だから、指導の際に、
目の前の選手の人生の課題をバスケットボールに投影し、
人生の課題を克服できるように、バスケを教えていたのだと思います。
その想いがPrinceton Offenseの中には含まれているのだと思います。
Princeton Offenseを単に「効率のいいシステム」とだけ捉えていたら、
こういった人生にも繋がるような変化は起きないでしょう。
動き方だけ知りたければ、ネットで調べたらだいたい知れます。
Princeton Offenseは間違いなく効率のいいシステムですし、
バスケの上達、勝利を手助けしてくれることも間違いありません。
ただ、そこに
Pete Carrilさんの想いを含めることで
初めて本物の「Princeton Offense」になる
と僕は思っています。
だって、キャリルさんが創ったものですからね。
創始者の考え方抜きに、プリンストンを語ることはできません。
だから僕はこれからもキャリルさんの言葉を必ず紹介していきます。
キャリルさんの考え方をベースにしたPrinceton Offenseを伝えていきます。
そして、Princeton Offenseを軸に、
関わる方の中にある経験や知識を統合して、
「賢者籠球」というバスケットボールの型を体系化させます。
賢者籠球とは、Princeton Offenseのことでもあり、
Princeton Offenseを軸にした各チームが創り上げる独自のバスケのことでもあります。
「Princeton Offense」とは、プリンストン大学の取り組みそのものです。
「トライアングルオフェス」のように、
「動き方や形」が名前になっているのではなく、
取り組んだ大学名がそのままオフェンスの名前になっています。
つまり、皆さんのチームで考えたら、
皆さんのチーム名そのものがオフェンスの名前になって世界に広まっている、ということです。
なので最終的には、
Princeton Offenseを採用していたとしても、
「〇〇〇オフェンス」という、皆さん自身のチーム名がオフェンスの名前になるような
そんな独自のバスケを自分たちで創り上げていくことこそが、
「Princeton Offenseに取り組む」
ということなのではないかなと考えています。
指導者と選手の取り組み方そのものが表れるということです。
この部分はPrinceton Offenseを学ぶ上で、
勘違いされやすいけど、きちんと認識しなければいけないところですね。
そんな素晴らしい仕組みを創ってくれたPete Cariilさん。
僕がなぜここまでプリンストンにこだわるのか?
というと、僕のバスケ人生に深く関わっているからとしか言えません。
※詳しくは別の記事でまとめます
小学5年生でバスケを始め、NBAを見始めたのですが、
その時、最も魅了されたチーム(キングス)にキャリルさんがいました。
そして大学3年生の頃、
バスケを楽しむ氣持ちを忘れかけていた僕に
バスケの楽しさ、チームでバスケをする本当の楽しさを教えてくれた相手チームが
プリンストンオフェンスをしていました。
その後、指導者になった時、
プリンストンを通して目の前の選手が自分らしさを取り戻し、
可能性を最大限発揮してチームで協力する姿を見せてくれました。
その経験をネットで発信したら、
今でも続く「賢者籠球」というコミュニティが生まれ、
多くの同志と出会えて、自分の生きる目的が明確になっています。
今の僕があるのはキャリルさんのおかげです。
人生の転機となるタイミングで、
偶然だけど必然のような出来事が起きています。
そして、実は
キャリルさんが亡くなる前日
にも、
とても不思議なことが起きていたのです。
今思えば
「キャリルさんからのメッセージ」
だったとしか思えないような、そんな不思議な出来事。
・・・
キャリルさんが亡くなる前日(15日)、
僕は賢者籠球の同志とZoomをしていました。
「プリンストンを体系化していきましょう」
「プリンストン大学の試合を分析していかないとですよね」
そんな話をしていました。
これからのやるべきことが明確になり、同志と出会うことができた素敵な時間でした。
その日、8月15日は日本が戦争で負けた日です。
なので僕はちょっと夜遅くまで、
戦争や先人たちのことを振り返っていました。
今の自分があるのは先人たちのおかげ。
今の日本に選択する事由があるのも先人たちのおかげ。
その想い、志を引き継ぎ、次の世代に伝えていくのが僕らの役目の一つ。
そんなことを想いながら、自分の志にあらためて思いを巡らせていました。
そんなことをしていたら、
時間がいつの間にか深夜2時を超えて
「そろそろ寝ようかな」と思った時、
メッセンジャーに1通のメールが。
一緒のチームでバスケをしたことがあるバスケ仲間からでした。
2022年8月16日(火)深夜2時24分
いきなりこれが送られてきたので
「どうしたんだろう??」と思いつつも、
「進んでおります👍」と返信しました。
人のせいにせず、自らが主体となってより面白い世界を創る。
すると、続いてこんなメッセージが。
熱いメッセージを読んで、
「なんだか、明日にでも死ぬみたいじゃないですか」
なんてことを思いながら、
僕は僕で戦争の動画を見たり記事を読んで、
自分の志(人生の目的)について考えていたところだったので、
「人生を通して何を成し遂げるべきか」という想いで淡々と返信しました。
そして、その数時間後、キャリルさんがこの世を去りました。
その訃報を聞いてからの僕の心境は最初に書いた通りです。
そして、心が落ち着いた頃、
バスケ仲間からのメッセージを読み返したら、
なんだかキャリルさんからのメッセージに思えてきたのです。
勝手な解釈なのはわかってます。
でも、そうとしか思えないような感覚でした。
バスケ仲間は熱い人なので、
僕とは何時間もバスケについて語ったことがあるのですが、
でも、なんだか、こんなことを言葉にされたのは初めてで不思議な感覚があったんですよね。
あたかも誰かが乗り移っているかのような。
もちろん、バスケ仲間本人であるけど、
その方もまた僕と同じように、2002年のキングスに魅了された一人であり、
バックカットやプリンストンについて何度も語ったことがある仲です。
有難いことですね、こうやって言ってもらえることは。
僕も同じように思います。
「プリンストンは世界を繋ぐ」
プリンストンは一つの戦術ではあるけど、
そこに含まれるプレーの数々には、バスケの基礎や本質が詰まっているし、
そこに含まれるキャリルさんの想いや考えは、チームを創る上で必要な本質的なものです。
全てのチームに通じる本質がプリンストンの中にあると僕は捉えています。
「バックカット」はもちろん、
自由なオフェンスを創る過程や、
キャリルさんの選手への向き合い方も。
僕はプリンストンを深め続けます。
それはつまり、
チームスポーツとしてのバスケットボールを
人生に活用できる学びが詰まったバスケットボールを深める
ということです。
キャリルさんは亡くなってしまいました。
でも、キャリルさんが創ったPrinceton Offenseは
今もなお、全世界で進化発展しながら活用されています。
そして、キャリルさんの志は無くなりません。
僕がキャリルさんの志を引き継ぎます。
僕の周りにいる同志たちも
同じように引き継ぐと言っています。
世界中でそういう人がたくさんいるでしょう。
キャリルさんがバスケットボールを通して、
世界中の人に与えた影響は計り知れません。
僕は僕なりのやり方で、
死ぬまでプリンストンを深め、発信し、
多くの人の経験を含めたバスケットボールの雛形「大和籠球」
を体化させて、後世に残していきます。
キャリルさん、本当にありがとうございます。
あなたから頂いたものを
きちんと最後まで丁寧に誠実にやり遂げ、
同志と共により面白いバスケットボールを創っていきます。
天国から見守っていてください!
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