最近、考えさせられる二つの話を聞きました。
一つは大学生から聞いた話。
友達の全国大会の応援に行ったところ、
途中で敗退してしまったそうなのですが、
その友達が引退後にこう言っていたそうです。
「やっと引退できる・・・」
全国大会は多くの人にとって憧れの舞台のはずなのに、
早く引退したいと思いながらプレーしている選手がいる。
監督にやらされるだけのバスケで、
練習も楽しくなければ、試合も楽しくなく、
「ただ勝つだけ」だったからだと言います。
周りからは「強い」「上手い」と言われていても、
実際にプレーしている選手は、バスケの楽しさを見失っている。
全てのチームがそうであるわけではありませんが、
少なくとも、そういったチームがあることは事実でした。
他にも、情報発信を通して、
中学生や高校生でも同じように、
「バスケットボールは好きだけど部活動は嫌い」
という話を聞いたことがありました。
ミニバスでは、
「あのチームは強いけど、子供たちは楽しんでいない」
という話を聞いて、保護者の方がどう思っているのかを聞いたところ、
「確かに指導は良いとは思えないけど、よくある厳しい指導だから目を瞑っています」
と。
これを「よくある話だ」と言って、
見過ごしてしまう現状は明らかにおかしい。
でも、それくらい見慣れた風景で、
これはバスケットボールに限らず、
他のスポーツでも同じ状況が起きていることが
色んな方と話していてわかってきました。
そして、もう一つの話は、
県内最弱だった高校生の話です。
その高校でプレーする7人の選手は、
入部して以来、一度も勝っていませんでした。
公式戦ゼロ勝。
それも全ての試合が20~30点差の完敗で、
選手たちは先が見えず、練習も試合も楽しくなく、
何のために部活動をしているのか、どうしてバスケをしているのか、
全くわからなくなり、子供たちは部活動をやることでストレスをためていました。
そして、そんな最弱の高校でバスケ部の顧問になったのは、
バレーボールが専門の新任教師の方でした。
この物語の続きは、本人の文章をお読みください。
私は、小学校4年生の頃からバレーを始め、
大人になってからもずっと何らかの形でバレーに携わっていたいなと思っていたので、
教員を志望し、晴れて高校教員になれました。
バレー部を持てるかもしれないという希望をもちながら現在の学校に赴任したのですが、
蓋を開けてみたら、バスケ部の顧問。
「なんのために教員になったのだろう…。
こんなんだったら義務教育の教員になって、
自分自身が思う存分バレーができる環境に身を置けば良かったな。」
と思うことは何度もありました。
しかし、出会ったバスケ部の子たちはみんな素直でいい子たち。
バスケ素人の私の話でさえしっかり聞いてくれる子たちでした。
聞けば、公式戦でほとんど勝ったことが無い、
指導者がいない中、自分たちで試行錯誤しながらバスケに取り組んできていているとのこと。
そんな状況に不満は抱きながらも、腐らずに、
県大会進出を目標に毎日真剣に部活に取り組んでいる子たちでした。
そんな目の前の子たちの熱量に感化されて、
私自身もバスケを頑張らなければいけない、なにかをしてあげなければいけない
と思いながら取り組んできました。
高校バスケに対して最初に抱いた印象は
「なんでこんなに走るのだろう?」
「なんでディナイをそんなに頑張らないといけないのだろう?」
「もっと効率よくオフェンスできるはず!」
「もっと簡単にディフェンスができるはず!」
ということでした。
でも、私には知識も経験もない。
ネットでいろいろ調べて
自分なりに勉強してみるものの、
どんなサイトにも共通して書いてあることは
「ディフェンスを頑張ってパスカットをする」
「小さいチームは走り勝つバスケをするしかない!」
ということでした。
それがいわゆる常識みたいなものなのだなと思いました。
夏から新人戦にかけては沢山のチームと練習試合をしました。
いろんな学校へ出て行っては
「うちのチームはどんな練習をしたら勝てるようになりますか?」
「どういう考え方を基にどんな練習をすれば強くなれますか?」
と聞き、そこで聞いたこと、見たものを基に、
自分の学校に帰って、言われたようなこと、同じようなことをやってみるものの
チームはなかなか強くなりませんでした。
今のチームで2回あった公式戦。
1回目は自分たちの力を出し切れないまま40分が過ぎてしまう。
選手も私も絶望し、
何が正しいのか分からなくなりました。
今までやってきたことをすべて否定してしまっている自分がいて、
どうやったら子どもたちは、公式戦で緊張することなく力を発揮できるのか分からず、
先輩教員に相談したところ、返ってきた答えは
「俺は練習や練習試合で怒ることで
試合と同じような緊張感をもてるようにしている。」
ということでした。
絶望の敗戦をしても、
次の大会までにはわずか2か月しかない。
「その大会で力を発揮できるようにしていくためには
練習や練習試合のときから子どもたちにプレッシャーをかけていくしかない。
2か月後の大会で力を出せるのなら嫌われたって良い。
40分の試合、緊張から入ったとしても、
私が大きな声を張り上げていればきっといつも通りになるだろう。」
と考える自分がいました。
そうして段々と、仲間内での揉め事も増え、
子供たちの顔からは笑顔が消えていきました。
それでも私は、
「勝つためなら仲良しクラブじゃダメだ!
これぐらい仲間内で揉めたことだって最後には笑い話になるだろう。」
と思っていました。
しかし、この考えは甘かった。
迎えた2回目の公式戦では
確かに子どもたちはいつも通りでした。
でも、いつも通りと言っても
全く楽しくなさそうなバスケ。
夏休みまでは簡単に勝っていた相手に11点差で負ける。
周りで見ていた他校の先生たちから言われたのは
「走り負け」
「イージーシュートがあれだけ入らなかったら仕方ないよ」
という言葉ばかり。
それはそうです。
イージーシュートを外したらベンチから怒られる環境で
自信をもってシュートを打てるはずがありません。
コートの中にも外にも敵がいるような状況。
またしても、私の考え方1つで
力を発揮しきれないまま公式戦が終わってしまいました。
このわずか2か月の間でいったいどれほどの子どもたちの涙を見たことか…。
好きで始めたバスケを、
本来は楽しいものであるバスケを、
部活の時間を、
私が奪ってしまっていたのです。
これで後は最後の大会を残すのみ。
どうすれば良いのだろうかと考えたとき、
またしても私は周りの先生に流されてしまいました。
「冬は1対1をとにかく鍛えるべき」
「走り込みをして体力をつけるべき」
こうしたアドバイスから、
もう1度走るバスケ、1対1で相手をやっつけること
を目標にしてしまったのです。
しかし、子どもたちはバスケを楽しんでいない。
走り勝つこと
スピードで相手をやっつけること
こうしたことを求めれば求めるほど
人数差、身長差、身体能力差で逆にやられてしまう。
ある子どもに、練習試合を終えて
「またなにもできなかった。バスケが嫌いになりそう…」
と目に涙を浮かべて言われたとき、
「私自身が聞いてあげれたか聞いてあげれてないかの違いがあるだけで、
きっとみんなこういう思いを抱えているのだろうな…。
もっともっと沢山戦い方を学んで、何が一番良いのかを考えなければいけないな…。」
と思い始めていました。
そこで出会ったのがプリンストンオフェンスでした。
プリンストンオフェンス。賢者籠球。
このバスケは、
スページングを活かして得点を目指す
型はあるものの極めて自由に攻める
その中でディフェンスと駆け引きをする
といったバスケの本質の部分、一番楽しい部分を最大限引き出せるシステムでした。
高みを目指せば目指すほど、
システムは広がりを見せ、
強者に勝てるのではないか!?
と思わせてくれます。
見ている方もやっている方も楽しい。
でも、やられてる側は意味が分からない。
人数の差、身長の差、身体能力の差など、
やり合えば差が出てきてしまう部分の差が出てこない。出させない。
ものすごく可能性を感じさせてくれました。
また、なによりも、
やっている子供たちに徐々にではありますが、
笑顔が戻ってきているように感じていました。
「お前たち、そんなことできたのか…!」
「めちゃくちゃ楽しそうじゃないか!」
たった1度の練習試合でそんな感情を抱きました。
そして、先日の練習試合では、
2か月前には11点差で負けていた相手に21点差で勝ってしまいました。
でも、正直に言うと、
指導者の立場としてやっていく上では怖さの方が強いです。
自分自身の成功体験がないから。
自分自身がやったことのあるシステムではないから。
バスケのことをよく知っているわけではないからです。
だからきっとこの先、
プリンストンを極めていけば、
多くの壁にぶち当たると思います。
それまで上手くいっていたことが上手くいかなくなったりしたときに、
子どもたちが考えるのはもちろん、
私自身も、もっともっと勉強していかなければならないと思っています。
そして、
今、目の前にいる子たちはもっともっとできる!
もっともっと遊び心をもってバスケそのものを楽しめる
と信じています。
私自身はあの2~3か月をものすごく後悔しています。
それでも、いつかきっと、
「あの時期があったからこその今がある!」
と思える時期が来ると思っています。
そのいつかに向かって、
プリンストンを極めていきたいと思います。
・・・
そして、この一ヵ月後、
地区の小さな大会で、この高校生チームは、
小さな一勝をすることができたのです。
運よく、僕はその場にいれたのですが、
子供たちの嬉し涙は一生忘れることがないと思います。
指導者の方が怒鳴っていた時期、
選手のみんなが苦労して悩んでいた時期、
それを僕は知っていたからこそ、
まるで映画を見ているような気分になりました。
周りのチームからは、
「まるで別のチームだ」
「雰囲気が凄く良くなった」
「人が変わったかのように明るくなった」
と言われたそうです。
そして、その小さな大会では、
全国区の高校も出場していたのですが、その監督に
「試合中に成長していた。バックドアが上手い」
と褒められたと言っていました。
この大会は小さな小さな大会でした。
公式戦ではありますが、
全国大会に繋がる大会ではないし、
周りから見たら「ただの一勝」です。
でも、最初に話した全国大会に出場した大学生と比べたら、
どっちの方が価値があるかわからないですよね?
全国大会に出場しても、勝っても、
喜べず「早く引退したい」と思うチーム。
小さな一勝だったとしても、
そこに対してチーム一丸になって取り組み、
バスケットボールを楽しみながら上達していく。
そして、小さいな大会であったとしても、
勝った後に、チームメイトたちと嬉し涙を流せる。
どっちが価値があるか、わからないですよね。
試合後、保護者の方が喜んで、
「歴史的な勝利です!!ありがとうございます!」
と指導者の方に言っていました。
それに対して、指導者の方は、
「いや、選手たちの素直さに僕が助けられただけです」
と静かに答えていました。
僕はその場にいて感じたのですが、
この小さな勝利が「歴史的な勝利」、
日本のスポーツ界を変えるだけの歴史的な勝利
なのだと思いました。
この高校生の指導者が学んだプリンストンオフェンス。
このシステムを作り出したPete Carrilは、
小さい頃から父親にこう言われていたそうです。
”The smart take from the strong.”
「賢者は強者に優る」
全国大会に出場した大学生と最弱だった高校生が試合をしたら、
確実に、圧倒的な点数差で大学生たちが勝つでしょう。
でも、その大学生たちは、
最弱の高校生たちが嬉し涙を流している場面を見たら、
おそらく、「羨ましい」「あんな風にバスケをしたい」と思うはずです。
最弱だった高校は、もう「弱いチーム」ではありません。
「賢いチーム」です。
今では、毎日の練習を楽しみながら、
真剣に勝ちを目指してバスケをしていて、
仲が悪かったのが嘘のように協力し合い、
部活の時間を楽しみに体育館に来るそうです。
これは、最先端のノウハウやテクニックが変えたのではありません。
もともと彼女たちや指導者の方が持っていた
「子供心」だったり、「素直な気持ち」というのを
取り戻すことができたというだけの話です。
指導者の方も、もともとはバレーをしているときに、
「賢者のバレー」をしていて、練習環境の差を埋める賢い戦略で、
独自の土俵を作り、全国大会に出場した経験がありました。
今の時代は、知識を学ぼうと思えば無限に学べます。
でも、そういったことを学ぶ中で、
「子供心」「原点」といった大切なものが
見失ってしまうことがあります。
これは今の時代、これからの時代で、
僕らが気をつけないといけないことだと思います。
バスケットボールを楽しんでいますか?
指導している選手たちは楽しんでいますか?
選手や子供たちの成長を楽しめていますか?
今回の通信講座、「賢者バスケ」では、
Princeton Offenseというシステムを軸に、
様々なテーマについて扱っていきます。
これまでのスポーツ界にあるネット教育とは全く違う世界観、
バスケットボールの技術的なことだけではなはくて、教育や日常に活かせる視点も深め、
メルマガを使ったコミュニティとして運営していきます。
参加者の方の意見をコンテンツに変えていきます。
Princeton Offenseとは、一つのオフェンスシステムに過ぎません。
でも、このオフェンスの中には、
・バックドアカットのコツ
・スクリーンの使い方
・チームプレーの醍醐味
・スペーシングの重要性
・フリーオフェンスの限界
・チームとしての共通理解
など様々な情報が詰まってます。
その視点を皆さんと一緒に深めていきます。
今日紹介した賢者の高校生チームも、
このコミュニティの中から生まれた物語の一つです。
今は中学生でもスマホを持つ時代です。
スマホは便利な反面、
「対人でのコミュニケーションが減った」
「スマホのせいで子供が勉強をしなくなった」
などといった問題も確かにあります。
でも、インターネットでしか学べない視点や
インターネットでしか生まれないご縁があります。
インターネットの良い部分を活かして、
バスケットボールを通して、インターネットを通して、
学校にも部活動にもない学びの場を作ります。
Princeton Offenseは一つオフェンスシステムに過ぎません。
でも、このシステムの中には、
賢者になり、強者に優るための視点、
教育や人生の本質が凝縮されています。
Princeton Offenseを日本のバスケの土台にして、
学校や部活動にはない色々な方の視点を学ぶことで、
日本のバスケから教育までを変えていきたいと思っています。
インターネットには、それだけの可能性があります。
古い価値観を壊して新しい常識を、
「賢者の世界」を一緒に創りませんか?
賢者籠球の詳細と参加はこちらから。
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