最近は色々なところで時代の話がされていますが、
バスケットボール界にも、その流れが来ていると感じます。
今日は、
「選手」から「指導者」へ
「指導者」から「編集者」へ
という変化を話していこうと思います。
まずは、「選手」から「指導者」へ。
これは単に「大人になったら指導者になる」という話ではありません。
現役で選手としてプレーしている学生たちが指導者になる
という事です。
今は誰もが知識を学ぶ事ができます。
それも世界中から調べたいだけ調べられます。
中学生でも、スマホで調べたらいくらでも学べる時代です。
そんな時代だからこそ、
指導者は選手の自主性を重視すべきであるし、
選手は選手で指導者に頼らず、自分たちから情報を学ぶべきです。
実際に、コートでプレーするのは選手たち。
選手たちが自分たちの事を一番わかっているし、
試合中に指導者の声がけがないと動けないプレイヤーよりも、
その場で味方と相手を見て自分で状況判断ができるプレイヤーの方が良いプレーができるし、上達します。
人が何かを学ぼうと思ったとき、
知識を定着させる一番の方法は何かというと、
誰かに対して教える
という事です。
つまり、選手の立場からすると、
誰かに対して教えることが成長に繋がります。
自分たちで情報を集めて、自分たちでコミュニケーションをとって、
プレーの良し悪しを話し合ったり、教えあったりすることが一番だということです。
何かを教えようと思ったら、いろいろな力が身につきます。
知識を学ぶことはもちろんですが、どうやったら自分が伝えたいことを上手く伝えられるかも考えないといけないし、
誰かに自分の意見を伝えている最中に、自分の考えは整理されたり、自分が理解できていないところが見えてきます。
「教えることができる」ということは、
知識が理解できていて身についている証拠です。
なので、教えることが一番な学びになります。
これを言葉にすると、
「インプットを前提としたアウトプット」
と言います。
一般的には、逆の言葉として、
「アウトプットを前提としたインプット」
と表現されることがあります。
誰かに伝えるために学ぼうね、って事です。
でも、これをすると、
「自分はまだ知識が足りないから誰かに教えることなんてできない」
という意識が強まってしまって、いつまでも学んだことが活用されないということが起きやすいです。
逆に、アウトプットを前提としてインプットだと、
わからないところが出てきても、それはそれとして、
次に活かしていけばいい、未完成でも大丈夫だと思えます。
知識を学んでいくと、わかる事が増える以上に、
実は、わからない領域というのが増えていきます。
それが勉強というものですよね。
1学んだら、10わからない事が見えてくる。
そんな矛盾しているようなことが起きるのが勉強だし、
逆に言えば、この感覚がなくて「自分はもう学ぶ必要がない!」と思ってしまったら、
何か一つの知識の枠組みに自分の価値観が縛られている証拠だと言えます。
だから、勉強すればするほど、
「自分が誰かに教えられる事ってあるのかな・・・?」
というような不安な気持ちが出てくることは自然なことです。
だからこそ、インプットを前提としたアウトプットが大事になります。
そういう考え方でいると、
上手くいかないことが出てきても、
まだ知らない事が多くても、行動できます。
そういう風な場があれば、
選手たちも周りと比べて自分の意見が正しいかとかを気にせずに、意見を言えるし、
仲間の話を聞くときも、相手の話を素直に受け入れることができるようになります。
そうなれば、選手たちが自分たちで意見を言い合って話し合って、
プレーの良し悪しを話せるし、自分たちのチームなんだという意識が強まって、
指導者に依存せず、自分たちのために練習をするようになるので、指導者が練習しなさいという必要がなくなります。
「自分の意見を伝えていいんだ」
という場を作るのが指導者の役目です。
以前、NBAのウォリアーズでこんな場面がありました。
選手に作戦ボードを託す
— NBAで凄いのはダンクだけ⁉︎ (@nbanotdankudake) 2018年2月15日
スティーブ カー。
「選手たちのチームなんだ。コーチの仕事は選手を正しい方向に後押しし、導くこと。コントロールすることではない。彼らが自分たちで運命を決めるんだ」
スポーツの主役は選手。
こんな場が増えて欲しい。pic.twitter.com/muLoeyE6AZ
これは本当に素晴らしいシーンですね。
選手に作戦ボードを渡すスティーブ・カーは、
インタビューで以下のように、このシーンを話していました。
「選手たちのチームなんだ。コーチの仕事は選手を正しい方向に後押しし、導くこと。コントロールすることではない。彼らが自分たちで運命を決めるんだ」
これは「NBA選手だからできること」「プロだからできること」で、終わらせることはできないシーンと言葉ですよね。
もちろん、NBAと同じレベルの話し合いはできないし、
ある程度の知識がないと、そもそも選手同士で話したり戦術を組み立てられないので、
そういう時は指導者が話し合えるようになるための道具(知識)を渡すことが必要ですが、
中学生でも高校生でも、選手たちは考えているし、自分たちのチームだという自覚を持ちたいと思っているものです。
「彼ら(選手)が自分たちで運命を決めるんだ」
とは、まさにその通りだと思います。
プレーするのは選手たちだし、
目の前の相手と駆け引きをするのも選手だし、
指導者はコートに出たくても出ることはできません。
じゃあ、指導者はどうしていくべきなのか?
というと、「編集者」という役割を担う必要があると思います。
これからの時代は、
様々な情報を一つに統合する
という役目が指導者には求められます。
その「情報」というのは、
・選手たちの意見
・参考書で学べる知識
・インターネットで学べる知識
など様々です。
選手たちが自分たちで意見を発信するようになると、
情報量が多くなる分、どれが正しいかがわからなくなります。
そんなときに、指導者の経験が必要で、
上から何かを押し付けるのではなくて、
「こういう風にやったらいいんじゃないか?」
という、一つの道を示して軌道修正していく必要があります。
今は指導者が上に立つことは難しいし、
立とうとすれば、選手の可能性を潰してしまいます。
上に立とうとするのではなくて、
選手たちの輪の中に入って、一緒にバスケを深めて、
編集者として情報をまとめて、指導者として導いていく。
チームの指導者は、そんな存在になっていくべきだと思います。
また、今の時代は誰でも知識を学べるという事は、
「選手が、指導者に対して新しい視点を伝えられる」
という可能性もあります。
そういう意味でも、「選手」から「指導者」へ、です。
指導者のような立場で味方に対して意見を発信するだけではなくて、
指導者に対しても、新しい視点を提供できるだけの可能性が今はあります。
それはもちろん、
指導者の方の考え方を合わせるべきなので、
「こんな事をインターネットで学んだんですけど、どうですか?」
という感じで、提案していくということです。
人生の中で、提案力は非常に大事な力で、
提案というのは、ただ自分の意見を言うだけじゃなくて、
相手の意思を尊重しながら、新しい考え方を一緒に創っていくということです。
相手を否定することなく、
かといって、自分の意見をただ伝えるのでもなく、
相手の意見と自分の意見を一つにまとめて、更に高い案を作るのが
「提案」です。
相手を否定せずに、自分の意見を伝える。
という事だけでも簡単なことではないですが、
そこから更に、意見を統合できたらベストだと思います。
そういう提案力が学生のうちから身についたら、
将来、色んな人間関係の中で活きる力になります。
これらをしていくためには、
選手が指導者に対して意見を言えるような人間関係
があることが大前提になります。
今の時代は、厳しさだけでは選手は動きません。
「とにかく厳しくすれば選手たちはついてくる」
というのは、一昔前のパラダイムです。
今はそういうことをしていても、
選手たちは活力がなくなっていくだけだし、
選手や自分自身の可能性を制限しているだけです。
(これは、また別の記事で。)
それと、チームを作るうえでは、
先輩が後輩に対して、チームの約束事などを教える
という文化を創ることも凄く大事です。
指導者が一から伝えていくのはなくて、
「一年生に、チームのオフェンスとかディフェンスについて教えておいてね」
と一言いうだけで、先輩たちが後輩たちにバスケを教えることが文化としてあれば、
先輩たちは指導することで、自分たちのインプットになるし、提案力も身について、
後輩たちは、先輩たちの話を聞いて、先輩たちとの良い関係を作ることができるようになると、
指導者はもっと違うところにエネルギーを注いでいけます。
先輩が後輩の指導者役になれれば、
チームの指導者は、チームの高いところにエネルギーを注げるので、
結果として、チームとしての上(学年的に)が高まって、そこから下に高いエネルギーが下りていきます。
そういう形で、選手同士が教え合えれば、
チームとして良い循環が生まれていきますよね。
この変化は僕が今体験していることです。
情報発信を通しても、そういった素晴らしい報告をもらうようになりました。
いつも興味深く読ませていただいています。
ミニバスの指導者(アシスタント)をしていますが、私は低学年を担当し、駆け引きの楽しさ、相手の裏をつく、スペーシングの大切さ、スクリーンプレーの楽しさなど、こちらで影響を受けた考え方を低学年から染み込ませようと試行錯誤し、短い時間で練習を考え、実行しています。
ミニバスでは運動能力とスピードに勝る相手はディフェンスでハードにプレッシャー、ディナイをかけてきます。それに対するバックカットというカウンターは特に役に立ちそうで、ペイント内での得点を増やしていける手ごたえを感じています。
なによりやらされてる感がなく、「コーチ作戦板貸して!」と元気よく自分たちで話し合いながら作戦会議している姿はとてもうれしく感じています。
1日授業を受けて疲れていても選手たちは笑顔で体育館に来ます。そこから最初に始まるのが20分間の鬼ごっこ。他の部活が声を出して真面目にやっている中、うちの子達は笑いながら走り回るところから始まります。そのあとのボールを使った練習も、自分たちのやってること(型)を高めるためにやっているので、比べる相手は昨日までの自分たち。ちょっとでも上手くなった、変化したチーム及び自分に喜びます。練習終わりには一人一人から今日のMVP発表ということで、練習中にキラリと光るプレーを見せた人、あるいは自分だけが見つけたかもしれない他人のいいところを発表し合います。
そういうことを繰り返していたら、先日の練習試合では勝っても負けても笑顔。更には試合間には自分たちで作戦ボードを持って行って話し合い。(コーチである私の元には一切来ず。笑)
小学生のサッカーは
団子サッカーから始まり、ポジションの概念(FW、MF、DF、GK)を理解して、役割を意識したサッカーへ移行していきます。この時陥ってしまう傾向が、攻撃しかしないFW、守備しかしないDFといった選手が生まれることです。
もちろん自分の役割を意識し、そこに注力することは大切ですが、ゲームのなかで状況判断しないことは、かえってチームを悪い方向に持っていきます。なので、私はポジションの話をする際
「ポジションはあくまで役割で担当。守るべきはポジションじゃないからね。必要なところに人がいるように。そのためだったらポジションなんか捨てていいよ!」と伝えています。これでも分からない選手には、「試合の中で3つのポジションをやってごらん」と声をかけています。
とすると、人が結構動き回って子どもたちが自分で考える面白いサッカーになることも、そうでなかったりすることもあるみたいな感じです。笑
ちなみに、この前に参加した大会でノーコーチングで臨ませていただきました。
その時は、スタンドから見ていたのですが、私が思い描いていたプレーより凄いプレーがたくさん生まれました!
コーチングしてい たら、生まれなかったプレーなのかなーと思います。また次回の配信も楽しみにしています!
「勝ちたい」という気持ちは、
選手の中から自然と出てくるべきものです。
「バスケットボールが楽しい」
という気持ちが根底にあったら、
自然と、勝ちたい気持ちが出てきて、
練習の質も、自然と高くなっていきます。
そんな場で育った子供たちは、
将来、誰かに対して楽しさを伝えられるし、
自分で物事を判断して動けるし、他人と協力できるはず。
選手たちがバスケを楽しめて、
指導者と一緒に成長していける場。
それがスポーツの本来あるべき姿だと思います。
そのために、これからの時代は、
・「選手」から「指導者」へ
・「指導者」から「編集者」へ
という変化が求められていると感じます。
これからのスポーツ界が楽しみです!
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