「NBA選手って何やってもカッコいいな。」
「NBA選手みたいにマッチョで、ドリブルが上手くなりたいなぁ。」
僕はずっと、バスケを始めた時から思っていました。
アメリカ人のプレーは、独創的で、型にハマらず、筋肉質で、身体能力が高く、とにかくカッコいい…。
バスケを始めた時からNBAに見入っていたので、いつでも憧れは「アメリカ人」「NBA選手」でした。日本人で生まれてくるよりも、アメリカ人で生まれてきたら人生変わっていたんじゃないかと思ったことがあるくらい。。NBA選手のようにジャンプ力をつけるため、NBA選手のようにマッチョになるため、とにかくウエイトトレーニングだ…!と思い、ひたすら高校時代に筋トレをしていました。
でも、いくら筋トレをしたとしても、
シュートの飛距離が伸びませんでした。
3Pシュートを簡単に届かせたいと思って筋トレを始めたのに、一向に改善されることはありませんでした。「まだ筋力が足りないんだ!」と思って筋トレをしても、結果は変わらず…。何が悔しかったかといえば、自分の方が明らかに筋力があるのに、自分よりも筋力がないチームメイトは簡単にシュートを飛ばしていたことです。
「才能の違いかー。自分はシュートセンスがないから、もっと筋トレで補わないといけないな」
そう思って、また筋トレルームに向かいました。
・・・
これは高校時代の話ですが、
この考え方が間違っていたことに気づいたのは、それから4年後でした。
大学3年生の冬に、大学院の先輩から「古武術」という考え方を教わりました。古武術とは、日本の武術で取り入れられている動きで、簡単に言うと「効率の良い体の使い方」のことを言います。古武術という言葉を聞いたとき、
「あー。そういえば、高校の部室に『古武術バスケ』みたいな本があったなぁ。」
くらいにしか思いませんでした。
僕の高校では、部室にバスケの書籍がたくさんあり(歴代の先輩が残していったもの)、その中の一つの「古武術バスケ」に関する本があったんです。でも、僕はその本をぺらぺらめくっていただけで、「ふーーん。」と思ってすぐに筋トレルームに向かっていました。
実はここが大きな境目だったのかもしれません今思えば。
自分の動きがどうなっているか?
「古武術」という言葉を聞いてどんなことを思いますか?
「なんだか古臭い。」
「少し前には流行ったけど…。」
「そんなことよりも、筋トレ筋トレ!」
そんなイメージがあるかもしれませんが、古武術とは効率の良い体の使い方のことであり、最小限の動きで最大の力を発揮するための体の使い方のことです。古武術は、難しいことでも、古臭いことでもなく、自分の身体や動きについて知ることとイコールです。自分のシュート動作やドライブ動作について知ることで、より効率の良い動きがあるのかということを探すことができます。
筋トレをすることも大切です。
でも、それが全てではないし、体の使い方を少し変えれば少ない動きで大きな力を出せるようになることもあります。筋トレをする10時間の一部、10分でも良いので「自分の動きを知り、効率の良い動きがないかを探すこと」をしてみてください。たった10分であっても、自分の動きを知り、身体を知り、試行錯誤することで効率の良い動きができるようになることがあります。
シュートのセットポジションと膝の曲げ伸ばし
今日、その先輩とシュートについてラインをしました。
大学卒業後の今は、お互い別々の地域に住んでいるんですけど、今でもラインでバスケのこととか面白い本についての話とかしていて、仲良くさせてもらっています。直接会わなくても、スマホを使って動画を撮り、それを送り合って、NBAの動画を見たり画像を見たりして、「この選手はこうなんじゃないか。」「ここをこう変えたらこうなった。」「今日やってみた動きはこれ」という感じでいろいろ話しています。
今日話したのは、「シュートのセットポジションと膝の曲げ伸ばし」についてでした。
ハーデンのシュートをYoutubeで見ていて、自分との違いに気づきました。
この一連のシュートの画像で、
・セットポジション(④)にボールが移動するまでの膝の曲げ伸ばし
に注目して見てください。
②→③の過程で
・腕(ボール)は、セットポジションに向かっている=力が上に向かっている
・膝(下半身)は、曲げようとしている=力が下に向かっている
ことがわかります。
④の画像では、
・腕(ボール)は、セットポジションの位置にある
・膝(下半身)は、③の画像と変わっていない
ことがわかります。
つまり、ハーデンのシュートは、
・セットポジションにボールがある時点(④)で、最大限膝の力が発揮される状態にある
ということがわかります。
カリーの1moiton shot
Stephen Curryのシュートをフォームを真似してみたいと思ってる人は、おそらく世界中に何万人もいると思います。そして、カリーのおかげで「1motion shot」というシュートフォームの概念が広まっています。
※1motion shotとは、キャッチからリリースまでの過程で動作が止まらず、ジャンプと同時にリリースをするシュート
僕は身長が低く、ジャンプ力があるわけでもないので、より速いモーションでシュートを打つために1motion shotを取り入れたいと思って練習をしてきました。その過程で、「早く打つためには、膝を伸ばし始めるのと同時に、腕もセットポジションに移動させた方が良い(上半身と下半身の力の向きを同じにする)」と考えてキャッチをしてからシュートを打っていました。
でも、よくよくカリーやハーデンのシュートを見ると、
・セットポジションにボールがある時点で、膝が最大限力を発揮できる状態(膝が伸び始めていない)になっている
ということがわかり、自分との違いに気づきました。
僕のシュートは、まだセットポジションにボールがない状態で膝が伸び始めていました。つまり、狙いを定めることが難しくなっていて、また力が上手く伝わらないシュートだったということです。1motion shotをイメージしていても、少し間違った打ち方をしていたということです。
『体の動き方を工夫する』
僕の中では、この画像の動きに違和感がありました。
「下半身(膝)の力の向きと、上半身(腕)の力の向きが逆を向いているから、力が伝わらないんじゃないか?」
そんな気持ちがあって、膝と腕の動きを同じ向きにしようとしていました。
でも、先輩からはこう言われました。
『一調子の動き(もしくは、「一拍子の動き」)』というのは、武術でよく使われる言葉です。二つの動作をバラバラに行うのではなく、同時に行うことをさします(武術の世界では、二つの動作をバラバラに「1、2」というタイミングで行っていると相手に斬られてしまうから)。
ここでは、
①ボールをセットポジションに移動される動き
②膝を曲げる動き
を同時に行うことが「一調子の動き」ということになります。
ハーデンは、②~④の過程で二つの動きを同時に行っています。
バラバラに行うと、ロボットのような動きになり、力が伝わりにくくなります。
上半身と下半身の力の向きは逆方向でも、狙いを定めるセットポジションにボールがある時点で、膝が最大限力を発揮することができる状態(膝が伸び始めていない)にあり、なおかつ、一調子の動きを行うことで力の分散が起きずにスムーズな、素早い動きができています。
体の使い方を変える
ウエイトトレーニングは大切です。
でも、闇雲にウエイトトレーニングばかりをするのは危険です。本当に自分にとって必要なことを冷静に考える必要があります。自分の体と動きについて知ることで、より効率の良い動きができる可能性は誰にとってもあるんです。「アメリカ人のようになりたい!」という西洋への願望は僕も昔は持っていました。でも、日本人として生まれた以上、日本人としてでしか生きることはできません。
いくらアメリカ人のような振る舞いをしても、
NBA選手のファッションを真似したとしても、
日本人であることを変えることはできません。
日本人には、西洋にはない素晴らしい考え方があります。それが「古武術」という自分の体について知り、効率の良い体の使い方を試行錯誤する考え方です。ただ闇雲に、アメリカ人の真似をする、強いと言われているチームの真似をする、有名な人の教えを聞くのではなくて、自分の頭で考えて、身体を動かしてみて「この動きは、身体にとって自然な動きか?」ということを自分の身体に聞いてみてください。
古武術について学ぶということは、
自分を知り、自分の身体と対話をすることです。
決して古い考え方でもないし、日本にしかない素晴らしい考え方です。
スポーツは、生まれ持った頭と体を使って、自分をより良いものに変化させていく遊びです。関節の可動域、腕の長さ、身長、動作の習得スピード、スポーツを始めた年齢、スポーツを始めた環境など、誰一人として同じではないため、プレーが変わってくるのは当たり前のことです。他人と比べるのではなく、過去の自分よりもより良い、より楽しい自分を目指して、試行錯誤していきましょう。変化させることができるからスポーツは面白いです。
スポーツは他の誰かと比べて人間の優劣を競うものでは決してないと思う。千人いれば皆違う身体や頭を使って選んだ山を精一杯登る遊びだ。金メダル取った選手より頑張った最下位も、苦しくて諦めた経験を知る者もいる。手に入るものはみんな違うけど地球人みんなで幸せになるための素敵な遊びなんだよ。
— 武井壮 (@sosotakei) 2015, 5月 24
誰でも変化を知れる時代
毎日使っているスマホで動画を撮れば、今の自分の動きを知ることができます。
片手に収まる大きさの、毎日使っているスマホには物凄い可能性があります。どんなことでも検索をすれば、世界中の情報を知ることができ、自分の動きを動画にとって分析することも、自分の考え方を世界中の人やチームメイトに瞬時にシェアすることもできます。NBA選手の動きを知りたかったら、Youtubeで検索をすればすぐに見ることができます。これは本当に凄いことですよね。
学ぶことで変化が生まれます。
変化のない日々を送るよりも、毎日変化を起こして、「もっと良い動きはないか」「もっと楽しいことはできないか」と試行錯誤していけるのがスポーツの楽しさです。僕は一生やめることができなさそうです。まだまだ未熟なので、もっとこれから動きを高めていこうと思います。いつも色んな話をしてくれる先輩に心から感謝…!今回の記事で登場した先輩は現在「武学籠球」という発信をしています。ブログはコチラから。シュートの講座も開講しています。
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