ボール運びの基本
ボール運びの基本を解説していきます。
ボール運びは「安全に」「余裕をもって」「焦らず」ハーフコートにボールを運ぶことが目的です。その上で、できれば、滑らかにハーフコートオフェンスに入れるとベストです。上手いガードの選手は指示を出しながらボールを運び、ハーフコートに入る前から次の準備をしています。そのコツを一つひとつ解説していきます。
視野「遠眼」

まず始めに「視野」についてお話します。
ボールを運ぶときは「遠眼(奥を見る)」の意識でコートの奥を見ながらボールを運ぶことが大切です。そうすることで、目の前のディフェンスから闘争心を引き出さず、自分がどの方向に進めば良いのか、どこにパスを出せば良いのかといったことを把握できるようになります。
ポイントは、目の前のディフェンスではなく、ボールを運ぶ先の「空間」を見ることです。
参考:意識&目の使い方「正眼」
意識「いつでも抜く」
ボール運びをしていてミスになるパターンの一つが「ボールを運ぼうとしすぎて相手への圧がなくなる」ということです。これはどういうことかというと、ボールを運ぼうと意識するあまり、「ドライブで目の前のディフェンスを抜く」という意識が薄れてしまい、相手からプレッシャーを受け続けてしまうという事です。
ディフェンスに対して「いつでも抜く」という怖さ(圧)を見せておくことは大切です。ただし、これは先ほど話した「遠眼」と真逆の意識になるので混乱してしまうかもしれません。少し意地悪な言い方になってしまうかもしれませんが「どちらも必要」ということです。
遠眼の意識でボールを運ぶことが一番の基礎だと僕は考えています(遠くを見るという事は、目の前のディフェンスを見ることも含まれるため)が、かといって、目の前のディフェンスがスティールを狙ってきたら「ドライブで抜く」「ドライブをしてファールを貰う」といった技術が必要になります。
実際にNBA選手のボール運びを見ていても、さりげなくボールをハーフコートに運んでいますが、その中でボールマンは「いつでも抜ける」という状態でドリブルしていることが分かります。その怖さがあるからディフェンスは容易にプレッシャーをかけられない、というのもNBAを見る時に注目しておきたいところです。実例を紹介します。
◆ボール運びをしながら抜く
— 原田毅@NBAで凄いのはダンクだけ!? (@nbanotdankudake) February 13, 2024
ポイントガードの必須スキルの一つだと思います。
「いつでも抜ける」 ということをディフェンスに示さないとずっと煽られる。いつでも抜けるからボール運びが楽になる、でもいうも抜けばいいわけじゃない。
この塩梅がガードは難しいところ。pic.twitter.com/eIbXRaokun
ポイントガードへ
— 原田毅@NBAで凄いのはダンクだけ!? (@nbanotdankudake) January 26, 2023
抜けるなら抜く
ボール運びで大事なこと
「いつでも抜けることを見せる」pic.twitter.com/fB0BE0WW7B
ボールを貰う位置
次にボールを貰う位置について。
強豪校と試合をしてボール運びで苦戦する場合、まずボールを出すところ(シュートinの後やout of boundsの後)でミスになるケースが多いです。ミスになるパターンの多くはコートの端でボールを貰おうとしてしまうことにあります。

1対1でボールを運ぶ自信があり、なおかつ、シールをしてきちんと貰える自信があるならこういった貰い方でもいいのですが、そうではない場合、このような貰い方をするとかなりの確率でミスになります。特にリングをまたぐパスになるとスティールされてそのまま相手に得点されるリスクも高いので危険です。
ボールの貰い方としては、エルボーあたりでシールをしてボールにミートするか、カールカットをするような形でディフェンスの前に出ます。
シールだけでは動きがなく、相手の方が力が強い場合にボールを受けることが難しいため、「ディフェンスの前側をカットする(カールカット)」でボールを受けてそのままスピードでフロントコートまでボールを運ぶ技術を身に付けた方が良いです。
もし相手が必要以上にディナイをしている場合はバックカットをして裏でパスを受けます。

この時、裏にパスを出す場合はサイドラインに近い位置からバックカットをしないとキャッチが難しくミスになる確率が高まります。裏を狙いたい場合はボールマンとアイコンタクトをとる必要があるのですが、基準の一つとしては「FTラインよりも下側(ボール側)にいる状態であれば裏を第一オプションにする」といった共通理解を作っておくのもお勧めです。
※ただし、ここでの裏パスは視野を保つことが難しく、浮いたパスになると後ろのディフェンダーにスティールされるリスクが高いため、あまり狙いすぎない方が良いです。

ドリブルをつく前
ボールを受けた後、「すぐドリブルをつこうとしない」という事も大切です。
周りの選手が走っていることを確認する
よくあるボール運びのミスで解説しているように、ボールを運ぶ際にバックコートに味方が残っている状態(=ディフェンスも残っている)でボールを運ぶとダブルチームを受ける可能性が高まります。なので、まずはボールを受けたら周りの選手が走っているか、もっと具体的に言えば「自分よりも後ろにディフェンスがいないか」を確認することが大切です。後ろからダブルチームをされるリスクがないと確認出来たらボール運びをスタートさせましょう。
ピボットを使う
相手がオールコートプレッシャーをかけているチームであればボールマンが焦れば思う壺です。すぐドリブルをつくとダブルチームを受ける可能性がありますし、味方にパスをする選択肢が無くなってしまいます。まずはボールを受けたら「ピボット」を使ってディフェンスをズラすことを考えるといいです。少しでもディフェンスがズレればスピードドリブルで前に進みやすくなります。ピボットは以下の参考ページでもお伝えしているようにもっとも過小評価されている技術だと言えます。
参考:ピボット
ドリブル
次にドリブルについて解説します。
ドリブルのスキルは様々なものがありますが、ボール運びで使うドリブルはハーフコートオフェンスにおける1対1のドリブルとは少し違う面もあります。あくまで「ボールをハーフコートに安全に余裕をもって運ぶ」ということが目的なので「相手を抜く」というよりも「運ぶ」というドリブルになります。
※その中で「チャンスがあればいつでも抜く」という意識が大切
※ドリブルの基礎についてはこちらのページを参考にしてみてください
広いスペースを攻める

すごく基本的な考え方から紹介していきます。
ドリブルをつく際、「広いスペース」にドリブルすることを意識するだけでボール運びの安全性は高まります。ディフェンスはサイドラインに追い込もうとしてくることが多いですが、それはコフィンコーナーがディフェンスにとって優位だからです。
闇雲にドリブルをついたり目の前のディフェンスと対峙する前に、正眼で奥を見て、ピボットでディフェンスとのズレを作り、広いスペースを攻める。それだけで複雑なドリブルスキルがなくても安全性にボール運びできる確率は高まります。広いスペースを攻めてディフェンスに止められたら逆サイドを攻める。シンプルですがとても大切な基礎です。
ハーフライン近くで止まらない

また、ドリブルでフロントコートに入る際、ハーフライン付近(上図の赤いエリア)で止まらないように意識することも大切です。赤いエリアは「スピードドリブルで突破する」という言葉で指導をするとターンオーバーのリスクを減らすことができます。
ドリブル①「リトリート」
次に基本的なドリブルとして「リトリートドリブル」があります。
これは下がるドリブルのことで、プレッシャーを受けた時に行う基本的なドリブルです。リトリートドリブルを練習する際、視野を下に下げないように前を向いて行うように指導することが大切です。また、ドリブルの基礎でも解説しているように「オフハンド」も忘れないように。
ディフェンスに接触させない
なぜリトリートドリブルが有効なのか?というと、ディフェンスが接触できなくなるからです。ディフェンスというのは「接触」を使って相手が活きたい方向を察知し、ドリブルを止めようとしてきます(これは「1対1のディフェンス」のところでも解説します)。

なので、逆にオフェンスの視点で考えれば、その接触点をできるだけ作らない方がボール運びをする上では楽です。接触させないためにリトリートドリブルはとても有効です。

ドリブル②「スキップ」
スキップドリブル、使ってますか?複雑なスキルがなくてもスキップを使うとディフェンスとのズレを作りやすいです。スキップのメリットは「ニュートラルな状態を作れる(ディフェンスの動きが止まる)」「状態を浮かすことでディフェンスの重心を少し上げることができる」ことです。スキップドリブルの価値を証明しているのが日本代表の富樫選手、河村選手です。
富樫選手のスキップドリブル pic.twitter.com/LMFY8xIPSD
— 原田毅@NBAで凄いのはダンクだけ!? (@nbanotdankudake) February 12, 2024
相変わらずの「富樫スキップ」
— 原田毅@NBAで凄いのはダンクだけ!? (@nbanotdankudake) July 5, 2024
スキップはとても有効pic.twitter.com/c6qr5FSzY7
河村選手は「スキップ」 を上手く使ってる
— 原田毅@NBAで凄いのはダンクだけ!? (@nbanotdankudake) January 23, 2024
スキップは
・自身がゼロになれる
(ニュートラルな状態になれる)
・相手の重心が浮きやすい
富樫選手もスキップが大得意
とてもシンプルな技
練習必須ではないでしょうか!?pic.twitter.com/9MlgaagK7R
ドリブル③「クロスオーバー」
ボール運びにおけるクロスオーバーは氣を付けなければいけません。なぜならハーフコートの1対1で行うクロスオーバーと同じように(相手を抜くために)クロスオーバーをするとスティールされる確率が高いからです。
具体的には以下のような形でスティールされることがあります。
◆スティールの仕方
— 原田毅@NBAで凄いのはダンクだけ!? (@nbanotdankudake) November 5, 2023
よく見るクロスオーバーのスティールを勝負所で。スティールのお手本。、 pic.twitter.com/TfEVo76x7o
ボール運びのところで、こういった形でスティールされてしまうと簡単に2点入れられてしまいます。そこで、クロスオーバーをする場合、どのようにしたら良いのかというと、肩を入れながらクロスオーバーをする、所謂「プッシュクロス」をすると良いです。
◆シュルーダークロス
— 原田毅@NBAで凄いのはダンクだけ!? (@nbanotdankudake) September 16, 2023
これ、クロスジャブからのプッシュクロス?という風に名前が付くスキルなのかなと(素人です)思うのですが、
実際にやってみました。
むずい。
これをこの場面で滑らかに。
実践してわかるすごさpic.twitter.com/MNxzCTaEaA
このDennis Schroderのような形で、肩を入れながらボールを斜め前につくとディフェンスにスティールされる可能性が下がります。オールコートのボール運びに関しては特にこのクロスオーバーを使った方がいいです。
ドリブル④「レッグスルー」
レッグスルーはとても効果的なドリブルです。
- 縦足になることでスペースが生まれる
- 縦足なのでいつでもドライブに切り替えられる
ボール運びにおいて、シンプルなクロスオーバーを身に付けた後はレッグスルーを身に付けることをお勧めします。これには練習が必要ですが、レッグスルーは練習すれば誰でも出来るようになるスキルだと思います。なぜなら動きとしてはクロスオーバーと一緒で、クロスオーバーのドリブルを股の下で行うだけだからです。
ボール運びのドリブルとして使う場合は切り返しに使うことが多いです。その場合は、両足着地と同時にレッグスルーをして切り返すとうまくできます。(※解説動画、今度撮ってきます)
また、NBAのStephen Curryがやるのですが、低いドリブルでレッグスルーを連続して行いながら歩くような形で前に進むのも効果的です。頭を前に出すことで縦のスペースを作り、ディフェンスからボールを守ることにも繋がります。

ただドリブルとしては応用でかなり練習しないとミスになるので練習必須です(これができるとカッコいいだけではなく、雰囲気としても「この選手にはプレッシャーをかけられない…」とディフェンスが感じるでしょう。実際にこの運び方をしている選手を見たことがありますがディフェンスはただ下がることしかできていませんでした。プレッシャーをかければすぐにドライブされて抜かれるかファールになるからです)
ドリブル⑥「バックビハインド」
バックビハインドも身に付けたい技術です。
フロントチェンジはボールを相手に前に置くので取られるリスクがあるのと、ターンは一度視野が無くなるので上手くやらないとダブルチームなどを受けてしまいます。バックビハインドは相手にコースを止められた後に行うと視野を比較的確保した状態で切り返しができ(できれば下を向かないで前を向き続きたい)、体でボールを守ることもできます。
先ほど紹介したWestbrookのドライブもバックビハインドを使用しています。
ドリブル⑦「ターン」
続いて、ターンについて。
ボール運びでターンを使うのは結構難しいです。なので、あくまで今まで紹介した①~⑥を基本にすることをお勧めします。なぜなら、ターンは一度相手に背を向けてしまうからです。視野が一度なくなるためディフェンスに取られやすかったりダブルチームされるリスクが高まります。
実際、ボール運びでミスになっているシーンを見ると「ディフェンスにサイドラインに追い込まれる→相手との間合いがなくてターンするしかない→スティールorダブルチーム」というパターンが非常に多いです。それくらい「相手に止められたから仕方なくターンをしてしまった」という状況で使うターンは良くないです。
でも、きちんと余裕がある状態で行うターンは効果的です。プロ選手のボール運びを見るとターンでボールを運ぶ選手が多いようにも感じます。身体でボールを守れるのできちんと「相手・ボール・自分」の関係性が保たれていて態勢も崩れていなければ、確実にボールを運べる手段の一つではあると思います。
ターンの具体的な方法と注意点を紹介します。
スティールされてしまうターンの仕方
ターンをする時、以下のような方法で持ち替えるとスティールされるリスクが高まります。



◆カンパッソのスティール
— 原田毅@NBAで凄いのはダンクだけ!? (@nbanotdankudake) March 24, 2021
これ、スティールの狙い時なんですが、うまくいかないとスパッと抜かれてしまいます。
ボール運びの時というより、こういう風に相手がキープしようとしてる時にやるとリスクも少ないです。30歳のカンパッソの大活躍、嬉しい。pic.twitter.com/p5q1DOmmry
ベンチの雰囲気
— 原田毅@NBAで凄いのはダンクだけ!? (@nbanotdankudake) March 24, 2021
178cmのカンパッソのプレーは、身長の小さい選手にとって本当に参考になる。スティールを狙わないとパワーで押し込まれたりしてしまいますもんね。チームの雰囲気、最高。pic.twitter.com/sQxo19Ax8z
これは「1対1のディフェンス」のところでも解説しているように、ディフェンスとしてはスティールの狙い所ではあるのですが、オフェンスはこのスティールをされないようにターンする必要があります。




まずはゆっくり動きを確認し、慣れてきたらスピードを上げます。





この時、大切なのは以下の2つです。
- ターンの瞬間以外は前を向いていること(遠眼)
- 持ち替える直前のドリブルはニュートラルなドリブルをつく
ニュートラルなドリブルとは「ターンしかできないドリブル」ではなくて「ターンもできるorドライブを選択できるドリブル」です。ディフェンスに合わせて対応できるようなドリブルをつきましょう。



ドリブル⑧「バックダウン」
最後に、バックダウンについて紹介します。
バックダウンとはポストアップなどで使われるドリブルです。背中を相手に向けた状態でドリブルで押し込んでいくイメージ、ボール運びのバックダウンはポストアップのそれとは少し違いますがやっていることは大きくは変わりません。身に付ける手順を紹介します。
1.横向きでドリブルをする


まずはボールを守る姿勢を取りながら横向きで進みます。この時、ポストプレーのように横歩きをするイメージで大丈夫です。ドリブルを相手から遠い位置に正確につくことを意識します。
2.体は横向きのまま意識は前に歩く

横向きのドリブルのままでは前に進むことが難しくなります。横向きのドリブルが身に付いたら、今度はその姿勢のまま、意識を前に向けてドリブルしていきます。そのまま「歩く」というイメージでドリブルを前にしていくと「体は横向きでボールを守りながら前に進むドリブル」というのができるようになります。
この時、ドリブルのコツとしては「少し後ろに引く」というイメージでドリブルできると良いです。ディフェンスに取られない位置でドリブルをし続けるという事です。その際、ドリブルを少しこねるイメージで後ろ側にドリブルをすると上手くいきます。詳しくは上記の解説動画をご覧ください。
エントリーのパス「ワンハンドバウンドパス」
これはハーフコートオフェンスの「エントリー」に関することなので、そちらで詳しく解説しようと思っていますが、ガードのスキルとして重要なので「エントリーのパス」について解説します。
ボールをはハーフコートまで運んだとしても、エントリーが悪いとハーフコートオフェンスの質も下がってしまいます。できるだけ安全に余裕をもって素早くエントリーできるとベストです。
エントリーのパスでミスになるパターン


よくあるエントリーのミスとして「浮いたパスを出してスティールされる」ということがあります。味方とタイミングが合っていると良いのですが、そうではない場合に普通のパス(バウンドパスではないパス)を出すと相手にスティールされる可能性があります。味方のミートが弱い場合もありますが、ガードは「味方を動かして味方にみすをさせない」というのも役割として必要です。
味方にミートさせるパス「バウンドパス+リードパス」


ここでお勧めなのが「バウンドパス+リードパス」です。
このパスはハーフコートオフェンスにおいてディナイされている味方に出すパスでも使えるので是非練習してみてください。バウンドパスはディフェンスが取りにくく、なおかつ、味方に対してミートする余裕を与えてくれます。
ディナイされている味方に普通の直線的なパスを出すと、味方はミートするのが難しく、ディフェンスの手に当たってミスになりやすいです。バウンドパスに「ミートして」というメッセージをこめてパスを出す(受け手の手前にボールを落とすイメージ)とミスになりにくいです。この時、できればドリブルの延長線上で「ワンハンド」でパスを出すことが大切です。